薄毛・AGA治療は医療控除の対象になる?

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薄毛・AGA治療を本格的に行うには、多くの場合AGA治療の専門医にかかることになります。いざ、治療を受けるとなると、AGAの治療費が医療控除や保険の対象になるのかどうか気になる方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、そもそも医療控除とはどのような制度なのか、またAGA治療で医療控除を受けるにはどのような条件を満たせば良いのかなどについてご説明します。これから薄毛・AGA治療を受けようと考えている方は、ぜひご参考にしてください。

AGA治療は保険適用外

AGA治療は保険適用外
まず基本的な事項として、AGA治療は公的医療保険が適用されません。というのもAGAはその性質上、美容整形などと同じように「自由診療」として扱われているため。つまり、健康を害する「病気」の治療ではなく、あくまでも見た目を良くするための「美容」目的の治療だと考えられているのです。
そのため、薄毛・AGA治療を受ける場合は基本的に患者の全額負担になるため、経済的なコストは大きなものになるでしょう。専門治療薬の投薬を継続するにしても月々1万円~3万円ほどはかかりますし、自毛植毛をするとなれば半年で60万円~120万円ほどの費用が必要です。すべて自費で賄えるという場合は特にする必要はありませんが、多くの方にとっては決して少なくない出費になるはず。
本格的なAGA治療を受ける際は、事前に費用がいくらかかるのか医師に相談し、後からトラブルのないようにしておくことが大切です。 しかし、保険は適用されなくても、場合によってはAGAの治療でも医療費控除を受けられる可能性があります。そのためには、まず医療費控除がどういうものなのか知っておく必要があるでしょう。

医療費控除はどのような制度なのか

医療費控除とは、1年間に使った医療費の合計が10万円を超える場合に、確定申告をすれば医療費の一部が所得税率に応じて還付される制度のことです。注意するべき点は、「確定申告が必要なこと」と支払ったお金が「医療費であること」。医療費と認められなければ還付されませんし、もちろん確定申告をしなければ1円も還付されません。具体的な還付額は納税額によって変わり、基本的に納税額が多いほど還付額も多くなります。

適用基準

医療費控除の適用基準は、「納税者本人」と「納税者とともに生活する家族」がその年の1月1日~12月31日までに10万円を超す金額の医療費を支払っているかどうかです。ここでいう医療費とは、健康保険や医療保険が適用された場合に支払った「自己負担額」を指すため、あくまで自分で支払った金額が合計10万円を超さないと適用されません。また、納税者の年間総所得額が200万円未満の場合は総所得の5%を超える医療費を支払った場合に、医療費控除が適用されます。

AGA治療は医療控除の対象になる?

AGA治療は医療控除の対象になる?
AGA治療は、基本的には医療控除の対象になりません。 医療控除の対象となる主な医療費には、次のようなものがあります。
  • 医師による診療、治療費
  • 薬にかかる費用
  • 病院、診療所、介護施設などへの交通費
  • 鍼師、灸師、柔道整復師、指圧師などによる治療費(病気の治療目的の場合のみ)
  • 保険師、看護師、准看護師などによる世話の費用
  • 助産師による分娩費用
など
このように、保険が適用され医療費とみなされるのは、身体機能を害する病気や、それに類するもの(出産など)です。
AGAは身体機能を害するような病気ではありませんから、先にも述べた通り、基本的には「美容目的」の治療とみなされ、保険が適用されません。保険の適用外ということは、基本的にAGA治療に支払った金額は「医療費」として認められないということです。
そのため、一般的なAGA治療は医療費控除対象になりません。ただし、保険が効かないAGA治療が絶対に医療費控除の対象にならないかというとそうではなく、一部のケースでは医療費控除が受けられることもあります。

AGA治療で医療費控除を受ける条件

AGA治療で医療費控除を受けるには、「薄毛・脱毛の原因が何かしらの病気であること」が条件です。例えば、以下のような病気の場合はAGAの症状を引き起こす可能性があります。

膠原病

膠原病 膠原病とは、関節リウマチやシェーグレン症候群など関節や臓器に炎症・痛みが起こる症状の総称です。明確な理由は判明していませんが、膠原病になると円形脱毛症や薄毛・脱毛が起こる場合があります。

鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血 鉄分不足による貧血になった場合、体内のヘモグロビンの量が著しく低下します。ヘモグロビンの量が少ないことが原因で抜け毛が増えることもあるのです。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症 甲状腺はホルモンバランスを調整している重要な器官です。その甲状腺の機能が低下した場合には、体中のホルモンバランスが乱れ、眠気や皮膚の乾燥、むくみなどが起こります。
ホルモンバランスがうまく調整できていない状態のため、抜け毛も起こりやすくなるのです。
このように、何らかの病気が原因となってAGAの症状が出たと認められれば、AGA治療費も医療費として考えられるため控除対象になる可能性があります。この場合、AGA治療費自体に保険が効かなくても医療費の控除対象にはなります。
ただし、最終的に判断するのは税務署です。税務署では病気によるAGAであることを納得してもらえるように、ていねいに病気とAGAの因果関係を説明しましょう。

医療費控除額の算出方法は?

基本的な医療費控除の計算式は、以下になります。
【医療費控除額=1年間に支払った医療費-(A)-(B)】
※A…健康保険や生命保険など公的医療保険から支給される治療費、給付金
※B…10万円(ただし、総所得が200万円未満である場合は、所得の5%)

年収300万円(年収200万円以上)の場合

例えば、年収300万円(所得税率10%)の人の年間医療費の合計が50万円で、そのうち保険で賄えたのが20万円だとします。 この場合、先ほどの計算式に当てはめると
医療費控除額:50万円-20万円-10万円=20万円
になります。
ここで注意したいのが、この計算で算出した医療費控除額がそのまま還付されるわけではないこと。医療費控除という制度は、医療費控除額を所得税率に応じて還付するという仕組みの制度です。
つまり、この例の場合は20万円×所得税率10%=2万円が還付されることになります。

年収180万円(年収200万円未満)の場合

仮に、同じ医療費の例で年収が180万円(200万円未満、所得税率5%)だった場合は
50万円-20万円-9万円(180×5%)=21万円
となり、最終的な還付額は21万円×所得税率5%=1万500円になります。
このように同じ額の医療費を支払っていても、年収によって還付される額は異なってきます。基本的には年収が高い=納税額が多いほど還付される仕組みになっているのです。

準備するもの

医療費控除を受けるには、税務署で確定申告を行う必要があります。確定申告の際には、」次のものを忘れずに持っていきましょう。
申請書はダウンロード可能ですし、その他の書類も事前に用意することができます。自分の薄毛・AGA治療が医療費控除の対象となるか不安という場合は、医師による診断書を持参しても良いかもしれません。
  • 確定申告の申請書(ダウンロード可能)
  • 治療費、交通費の領収書(病院の領収書は再発行できない可能性があるので厳重保管)
  • 源泉徴収票(年収の証明)
  • 口座情報(還付金を振り込んでもらうために必要)

おわりに

薄毛・AGA治療は基本的には保険も適用されなければ、医療費控除の対象にもなりません。薄毛・AGAは「病気」だとは認められておらず、あくまでもその治療は整形などと同じく「見た目を良くするための治療」だとされているためです。しかし、何かしらの病気が原因となってAGAが起こったという場合には、医療費控除の対象になるケースもあります。ご説明した条件に該当する方は、必要書類を持って税務署で確定申告をすると医療費の一部が還付されるかもしれません。