円形脱毛症の原因は?初期症状と皮膚科で行う治療法の種類

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なんの前兆もなく、突然症状が現れるケースが多い円形脱毛症。その原因はさまざまですが、最近では自己免疫疾患との関連がもっとも深いのではないかといわれています。
円形脱毛症には多くの種類があり、それぞれの症状の進行状況も異なるため、各症状に合わせた対策が必要となります。
そこで今回は、円形脱毛症の症状の特徴と原因、皮膚科で行う治療およびセルフケアの方法についてご紹介します。

円形脱毛症とは?

円形脱毛症とは、文字通り円形型に毛が抜け落ちてしまう脱毛症のことを指します。
一般的には10~500円玉くらいの円形、または楕円形の脱毛斑ができることが円形脱毛症の特徴です。しかし、脱毛症状が頭部全体に広がったり、まゆ毛やまつ毛などが脱毛してしまったりなどの重度なケースも稀にあります。
円形脱毛症を発症していても、脱毛箇所が後頭部など普段正面からみえないところに起きている場合は、なかなか自分では気が付かないこともあります。
そのため、美容室に行った時や家族に指摘されて初めて、自分に円形脱毛症があるということが分かるケースも珍しくありません。

円形脱毛症のセルフチェック方法

前述のとおり、円形脱毛症は自分では気が付かない場合も多くあります。
セルフチェックの方法として、以下を参考にしてみてください。

抜け毛量をチェック

枕についてる抜け毛 起床時、枕に付いている抜け毛量がいつもよりも増えたと感じたら要注意です。抜け毛の量の多さが気になったら頭皮全体を指で触り、脱毛斑がないかどうかを確認してみましょう。

抜けた髪の毛根・太さをチェック

抜けてしまった毛の毛根が細くとがっている場合や、1本1本の太さが細い場合、髪が正常に成長できていないということが考えられます。

爪をチェック

爪を拡大にした指3本 円形脱毛症の初期症状の1つに、爪の表面にブツブツとした小さなデコボコが生じることがあります。
頭皮に異常が起きると同時に爪にも異常が出るケースがあり、円形脱毛症を発症した方の多くに、爪にも初期症状がみられるといわれています。

円形脱毛症の原因

円形脱毛症の原因は、体質の変化や遺伝的要素、精神的なものを含む健康状態が大きくかかわっていると考えられます。
中でも近年、原因として有力視されているのが、免疫機能の異常によって毛母細胞に悪影響を与えるといわれる「自己免疫疾患」です。
こちらでは、自己免疫疾患をはじめとする、円形脱毛症の原因の代表的なものをいくつかみていきましょう。

自己免疫疾患

男性が鼻をかんでいる姿
私たちの体は、“免疫”と呼ばれる防護機能が働くことで、ウイルスなどの外敵から健康を守っています。その免疫機能が何らかの原因で異常を起こし、体の一部を異物と判断して攻撃してしまう病気のことを、自己免疫疾患といいます。
円形脱毛症は「Tリンパ球」と呼ばれる免疫系の細胞が、毛根を異物と見なし攻撃を加えることで発症するといわれています。 しかしなぜ、正常だった免疫細胞が突然毛根を攻撃してしまうのか、その原因はいまだ解明されていません。

アトピー性疾患

アトピー性皮膚炎、気管支炎、アレルギー性鼻炎などのアトピー性疾患を持つ方が、円形脱毛症を併発するケースも多くあります。
日本皮膚科学会が2010年に発表したガイドラインによると、円形脱毛症を発症した人のおよそ半数以上が、本人もしくは家族がアトピー素因を持っていることが分かっています。

精神的ストレス

精神的ストレスも、円形脱毛症の原因の1つとして考えられています。
ストレスによって精神的ダメージを受けると、それに抵抗するために交感神経が活発に働き出します。交感神経がストレスと戦ってくれることで、体のバランスが正常に戻るのです。
しかし、ストレスの度合いが強すぎたり長期間続いたりすると、交感神経がうまく稼働せず、筋肉や血管が収縮してしまいます。それにより血行が悪くなるため、毛根への栄養補給が十分に行き届かなくなり、脱毛が引き起こされると考えられます。

ホルモンバランスの乱れ

妊娠中、女性ホルモンは通常時のおよそ100倍以上多く分泌されるといわれており、出産後はそれが急激に通常値に戻ります。
一時的にホルモンバランスが崩れてしまうため、産後は頭髪全体のボリュームが減少してしまう「産後脱毛」になることが多々ありますが、その際に何らかの影響で円形脱毛症を発症してしまうケースも少なくありません。

円形脱毛症の種類

円形脱毛症にはいくつかの種類があり、それぞれのタイプにより、形状や抜け方が異なります。 ここでは、タイプ別にその特徴をみていきましょう。

単発型

円形脱毛症の中でももっとも発症率が高く、かつ症状も軽いものが「単発型」です。 単発型の特徴は、円形または楕円形の小さ目の脱毛斑が1カ所にできます。
単発型は自己免疫疾患やストレスなどが主な原因と考えられており、多くの場合は特別な治療は必要なく、ストレスが解消されていくと共に自然と症状も収まる傾向があります。

多発型

円形脱毛斑が2カ所以上発生するタイプが「多発型」です。
同じような大きさの脱毛斑が1度に2カ所にできたり、最初は1つしかなく、それが改善した後すぐにそれとは異なる場所に脱毛斑ができたりするケースもあります。 また、複数の脱毛斑が結合し大きくなることもあり、それは「多発融合型」として分類されます。

蛇行型

後頭部や側頭部の生え際にできた複数の脱毛斑が徐々に結合し、帯状に広がるタイプを「蛇行型」といいます。
範囲が広くなるため、治療期間が長期になるケースが多いものこのタイプの特徴です。

全頭型

多発型が頭部全体に広がり、髪の毛の大部分が抜け落ちてしまうものが「全頭型」です。 単発型から多発型に進行し、最終的に全頭型に変化してしまうケースがあります。
非常に治りにくいため、治療が長期にわたるケースがほとんどといえます。
しかし、このタイプは段階を踏んでゆっくりと進行するため、一気に髪の毛が失われるというようなことはありません。そのため、早期に治療を行うことで回復する例も少なくありません。

汎発型

頭髪だけでなく、まゆ毛やまつ毛、ワキ毛などの体毛が抜け落ちてしまうタイプが「汎発型」です。円形脱毛症の中でもっとも重症なタイプといわれており、全頭型と同様、治療期間は長期にわたります。
このタイプも段階を踏んで症状が拡大するのが特徴のため、早期治療する必要があります。

円形脱毛症の治療法

円形脱毛症が認められたら放置せず、早めに皮膚科を受診するようにしましょう。 ここでは、皮膚科で実際に行われている一般的な円形脱毛症の治療法をご紹介します。

ステロイドの投与

医者が注射器を持ってる姿
単発型や繰り返して脱毛部分が拡大した多発型の脱毛斑に、直接注射でステロイドを注入するという治療法です。
ステロイドとは、炎症や過剰な免疫反応を抑える効果の高い治療薬のことです。 高い治療効果は認められていますが、注射時に痛みが生じたり、注射跡が残る可能性があったり、発熱などの副作用リスクも低くないため、子どもの脱毛症に使用されることはほとんどありません。

内服薬の服用

円形脱毛症の治療には内服薬が処方されることも多くあります。
単発型、軽度な多発型などに多用されることが多いのは、アレルギー反応を抑制する作用が高い「セファランチン」や「グリチルリチン」です。
その他、成人の場合はステロイド内服薬や、メチオニンなどの抗ヒスタミン剤なども処方薬としては主流となっています。

外用薬の塗布

内服薬と併用して「塩化カルプロニウム」や「ミノキシジル」などの外用薬による治療も一般的となっています。
内服薬と同様、単発型や軽度な多発型の症状に対しての治療法です。

冷却治療

異常反応を続ける免疫機能を抑える目的で「ドライアイス」や「窒素」などを脱毛斑に直接あてて冷却し、毛髪の再生を図る治療法となります。
冷却する際は頭皮に多少の痛みは生じますが、副作用がほとんどないため、リスクの少ない治療法といえます。

紫外線治療

紫外線治療は、円形脱毛症のほか、アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬(かんせん)などの皮膚病などに対しても行われている治療法です。
「PUVA治療法」「ナローバンドUVB療法」「エキシマレーザー療法」などがあり、いずれも紫外線を照射することで免疫作用を抑え、毛根の再生を促すことを目的とした治療法となります。
回数や頻度は症状により異なりますが、一般的には2週間に1~6回程度、数カ月に渡って照射治療を行います。

セルフケアで事前対策

円形脱毛症のケアと対策は、自宅で簡単に行うことができます。
「円形脱毛症は認められないが抜け毛量が目立ってきた…」という状態であれば、次に紹介するセルフケアを実践してみましょう。

頭皮マッサージ

頭皮マッサージを行い血行が促進されることで、毛母細胞に栄養素を送りやすくする効果が期待できます。
頭皮の血流を常に万全にしておくためにも、シャンプー時やお風呂上がりなどに、頭皮を指でやさしくもみほぐすマッサージを習慣化するようにしましょう。

シャンプーを変える

シャンプーは、頭皮にやさしくアミノ酸系シャンプーがおすすめです。
アミノ酸系のシャンプーは、皮脂や毛穴の汚れなどを少ない刺激で落としてくれます。
頭皮環境が良くないと感じている方は、ぜひアミノ酸系シャンプーに変えてみてください。

食生活の改善

バランスの取れた食事 頭皮に良い食生活を送るには、脂っこいものや塩分・糖分過多のものは極力控え、バランスの取れたメニューを意識することが大切です。
髪の毛の生成に欠かせないタンパク質やアミノ酸、ビタミンなどが豊富な食材を積極的に摂取することで、弱った毛母細胞の力が回復する可能性が高まります。

適度な運動

男性と女性のジョギング姿 ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、体の血流の循環を改善する運動として最適といえるでしょう。
また、適度に体を動かすことでストレス発散にもつながるため、健康な頭皮環境を作るうえで運動は欠かせません。

おわりに

今回は、円形脱毛症の症状の特徴と原因、皮膚科で行う治療およびセルフケアの方法についてご紹介しました。
円形脱毛症は、症状が軽いものから克服が難しい重度な症状まで、さまざまなタイプがあります。しかしどのタイプであっても、単発型から段階を踏んで進行するため、突然発症するということはありません。そのため、早期発見・早期治療を目指せば多くの場合は回復するといわれています。
抜け毛量が気になり出したら、まずは頭皮全体をチェックし、円形脱毛症があるかどうかを確認するようにしましょう。