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A.つくれません。とはいえ生きた毛根が残っていればもしかしたら…。
映画や小説の世界では、髪の毛一本からDNA情報を読み取る科学捜査によって犯人を特定したり、髪の毛一本から自分の分身を生み出したリできますが、現実世界ではなかなか難しいようです。
まず、汗や唾液と同じように、髪の毛からDNA鑑定をすること自体は可能です。
しかし鑑定には二つの条件が必要です。
まず一つは、毛根が生きたまま残っていること。つまり途中から切れている髪の毛や、時間が経過して死滅してしまった髪の毛では、その時点でDNA鑑定ができないということになります。
そしてもう一つは、髪の毛の芯の部分にある「毛髄質(メデュラ)」が残っていることです。毛髄質には人それぞれ異なるDNA情報が書き込まれていると同時に、太さも異なります。DNA鑑定の際には、毛髄質が太くて量が多いほうが個人を特定しやすいようです。
つまり、DNA鑑定でさえこれら二つの条件を最低限クリアしていなければならないのに、そこからクローンの作製にいたるのは非常に難しいといえます。
とはいえ裏返せば、二つの条件をクリアしていればクローンがつくれる前提には立てるのかもしれません。有名なクローン羊のドリーが誕生した日からすでに20年以上が経ちますが、再生医療や遺伝子改変技術の分野では今なお、日夜研究が重ねられています。
たとえば、すでに中国ではクローンの猿や遺伝子操作を施したヒトの赤ちゃんを誕生させています。私たち一般の目にふれる情報ですらここまで技術が発達しているのですから、おそらく最先端の科学技術は想像の範囲外でしょう。ちなみにノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥さんたちが研究・開発しているiPS細胞は、毛根細胞(生きている体細胞)からはつくれるようなので、根元から抜いた抜けたてほやほやの髪の毛からであれば、理論上iPS細胞をつくれるということになります。
仮に科学技術の面ではさまざまなことが実現できるとしても、ほかの科学技術と同様に、クローンや遺伝子操作の分野にもついて回るのが倫理の問題です。たとえば先ほど例に挙げた中国のクローン猿やデザイナーベビーは、国際世論から大いに非難されました。
では日本の立場はどうかというと、日本には2000年にすでに「ヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律」が公布されています。要するに、「クローン人間をつくってはいけません」という法律です。
将来的に日本の法律や倫理観がどのような道をたどるのかはわかりませんが、映画や小説のように髪の毛一本からクローンがつくれる世界はしばらく来ない、と結論づけていいでしょう。
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