カリスマ美容師とは何だったの?

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A.ひと昔前の社会現象でした。
とはいえ現在でもカリスマ的に崇められる美容師さんはたくさん活躍しています。
雑誌やテレビで「カリスマ美容師」という言葉が広く日常的に使われるようになったのは、2000年頃からだったと記憶しています。
その最大のきっかけとなったのは、私が思うに「Beautiful Life ~ふたりでいた日々~」(以下「ビューティフルライフ」)というテレビドラマでは無いでしょうか。
2000年の1月~3月にかけて日曜21時からTBS系で放送されたビューティフルライフは、主演に木村拓哉さんと常盤貴子さん、脚本に北川悦吏子さんという豪華な顔ぶれによって制作されました。
平均視聴率は32%を超え、最高視聴率はなんと41.3%という今となっては異例の大ヒットドラマでした。まさに社会現象だったのです。
そのビューティフルライフにおいて木村拓哉さんが演じていたのが美容師でした。
これまで美容師という職業がマスメディアに大々的に取り上げられることは少なかったなか、ドラマ人気にともなって、美容師という職業が脚光を浴びるようになったのです。
たとえば当時のお昼のワイドショーでは、あか抜けていない素人をファッションスタイリストやカリスマ美容師の手によって変身させるような、ビフォーアフターのコーナーが大人気でした。
表参道や青山のヘアサロンでトップスタイリストを務めるカリスマ美容師たちは、番組の準レギュラーといっても過言ではなく、世の奥様たちを魅了していたのです。

何をもってカリスマ美容師となるのか

ここで根本的な疑問となるのが、「何をもってカリスマ美容師と認定されるのか」です。
私の持論を先にいえば、場所や収入などの明確な定義はないので、周囲の人のなかになんとなく漂っている「この美容師は本当にすごい」という空気がカリスマ美容師をつくり出しているのだと思います。
とはいえ、ある一定の基準はあるはずです。大きく分けて、次の4つの要素がカリスマ美容師に求められる最低条件だと私は考えています。

スキル

まず1つ目は、大前提として、カットやカラーなど美容師としての手業のスキルが一流である必要があります。

話術

そして2つ目は、話術です。会話のキャッチボールやささいな声かけ、提案力などがこれに当たります。
どれだけ手業がすごくても、仏頂面でただバサバサとカットするだけではお客様が大満足することはきっとないでしょう。

センス

続く3つ目は、とにかくセンスがいいことです。
着ている服にしてもそう、会話の中でわかる映画や音楽の趣味にしてもそう、何においても感度が高く、かつセンスが抜群である必要があります。

ヴィジュアル

カリスマなる者、相応の美貌や風貌が求められるといっていいでしょう。
さらに追加でもう一つ。
大大大前提となりますが、美容師免許を取得していることは当然すぎる必須要件となります。
というのも2000年代前半、カリスマ美容師人気が高まりすぎたゆえ、「カリスマ美容師」と自称しながら実は免許を持っていなかったという詐欺事件が横行したのです。
免許を持っていなければ「カリスマ」はおろか「美容師」を名乗ってはいけません。

カリスマ美容師は不滅

このように一世を風靡したカリスマ美容師ですが、現在はどうなっているのかでしょう。
「カリスマ美容師」という言葉はすでに古びてしまったと感じます。
しかしひと昔前とまったく変わらず、カリスマ的な美容師は存在し、人気も健在だということです。
つまり、言葉だけが時代から取り残されてしまっただけという状況です。
その証拠に、「日本一予約が取りにくい」という美容師さんが現在の日本にもいます。
当然ながら容姿端麗、センス抜群です。
しかも自著を出版するなど、その行動範囲は美容業界に留まりません。
NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組に取り上げられた際には、彼の話術が際立ったほか、自然体で親しみやすい人物像にも注目が集まりました。
「カリスマ美容師」という言葉は古びたかもしれませんが、現在にも確実に「カリスマ美容師」は存在しているのです。