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どんな人でも、AGAになるリスクはあります。男女年齢問わず、薄毛や抜け毛などの症状に悩む人は増えていますが、その原因や症状、種類はさまざま。
今抱えている症状が本当にAGAと呼べるものなのか、基礎的な知識がないとなかなか判断できません。
まずはAGAに関する基本的な情報をしっかり押さえることからはじめましょう。
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AGAの初期症状
多くの場合、AGAでは最初の段階として以下のような症状が見られます。髪のハリやコシがなくなる
正常な成長サイクルの中で生えてきた髪の毛であれば、根元からしっかり伸び、髪質も太く頑丈である傾向があります。髪の毛の90%は成長サイクルの中の成長期で生えてきますが、この時期の髪の毛は通常、ハリとコシがあるもの。髪の毛に生気がなくなって細く弱々しい状態になれば、十分成長することなく抜けやすくなります。髪の毛本来が持つ特徴が失われているとしたら、AGAの可能性があるかもしれません。
髪が細くなる
それまで太かった髪の毛が、急に細くなりだしたら、AGAのサインかもしれません。髪質の変化は、頭皮の育毛環境が正常でないことの表れともいえます。髪の毛の成長に必要な栄養素が届いていれば、髪質の変化も起きず、細く弱々しくなることもありません。髪の太さがなくなり、細い毛が増えていく状態を放置すると、状況はますます悪くなることが懸念されます。髪の毛の栄養不足が原因で遅くなる可能性もありますので、亜鉛やタンパク質などが足りていないか、食生活の見直しを図ることも重要でしょう。
抜け毛が増える
髪の毛の成長サイクルに異常が起きて抜け毛が急激に増えたなどの現象もまた、AGA初期によく見られる症状です。髪の毛は通常、「成長期」「休止期」「退行期」という毛周期(成長サイクル)の中で生えたり、抜けたりを繰り返します。髪の毛が生えてくるのは成長期の段階で、この周期は2~6年程度。生涯に生える髪の毛全体の80~90%はこの期間に生えてくるといわれ、髪の状態も太くたくましいのが特徴です。この成長サイクルに異常が発生し、成長期の期間が極端に短くなると、抜け毛の量が通常より速いペースで増え、生え際や頭頂部などもどんどん薄くなってしまいます。つまり、抜け毛の増加は成長サイクルの異常が原因で起きていると考えられるのです。
AGAの判断基準
自己判断でAGAであるかどうか見極めるのは難しいですが、参考となる判断基準もあります。以下のような症状があれば、専門機関に行って診断することをおすすめします。薄毛の定義から考える
海外では、薄毛について定義付けがなされています。それは「角額(そり込み部分の先端)と頭頂線の前方2㎝以内の頭髪」です。つまり、つむじから両側の耳に線を引いて、そり込部分の生え際との間隔が2㎝以内だったら、薄毛と判定されます。髪の毛はおでこに生え際を持っていますが、その生え際がどんどん後退すると、頭頂部に接近してきます。これは、生え際の線が頭頂部まで極端に近くなれば、薄毛の状態であるという考えによるものです。
これはあくまで海外の基準であり、日本では生え際だけでなく、つむじ周辺の脱毛状況を見てAGAと判断するケースもあります。診断方法や基準というのも専門クリニックや皮膚科によってさまざまです。
軟毛の比率
髪の毛の軟毛化を見て判断する場合もあります。軟毛化と聞くと、髪の毛にハリやコシが失われた状態をイメージすることでしょう。確かにハリやコシのない髪の毛は生気に乏しく、抜け毛を誘発しますが、単に髪質の問題ではありません。軟毛化は髪の毛の成長サイクルと大きく関係しています。髪の毛にはヘアサイクルがあり、その周期の中で成長していきます。ところが、AGAになるとそのサイクルに変化が生じ、完全に成長する前に抜け落ちます。これがいわゆる軟毛化と呼ばれる症状です。つまり、軟毛化とは髪の毛が未成熟で抜けやすい状態を表します。
一般的に、この軟毛化の比率が20%に達すると、AGAと判断されることが多いです。しかし、あくまでひとつの基準であり、必ずしもそれによってAGAだと断定できるものではありません。
生え際のボリューム感
生え際の後退の程度や、ボリューム感を見て判断する方法もあります。薄毛や脱毛症が頭部のどこからはじまるかは、人それぞれです。しかし、おでこの部分にはAGAの主因となる5αリダクターゼがもっとも多く存在することから、頭頂部より生え際の薄毛リスクが高いといえます。頭頂部に十分な髪の毛が残っていたとしても、生え際にボリューム感がなくなったり、細い毛が多くなったりするなどの症状が見られれば、頭皮環境の正常化に向けた対策が必要です。
AGAの種類
AGAは大きく分けると3つのタイプが存在します。「M字タイプ」「O字タイプ」「U字タイプ」 です。M字タイプ(中央部以外の前頭部が薄くなる)
これもまた、前頭部に見られる薄毛の症状ですので、ジヒドロテストステロンを生成する5αリダクターゼの影響が大きいといえるでしょう。この酵素が少ない人は男性型の脱毛症にかかるリスクが低く、多い人ほどAGAを発症しやすいともいわれます。また、5αリダクターゼの影響のほか、リーゼントなど特定のヘアスタイル習慣を持つ人にも多いのがこの症状の特徴です。
O字タイプ(頭頂部が薄くなる)
O字タイプの薄毛になる原因には、男性ホルモンの影響のほか、シャンプーの使い方や、バランスを欠いた食生活、頭皮の肌荒れなど多岐にわたり、トータル的な視点で診断する必要があります。
U字タイプ(前頭部が薄くなる)
前頭部が薄くなる原因には、酵素・5αリダクターゼが深く関わっています。男性はテストステロンをAGAの原因物質であるジヒドロテストステロン(DHT)に変化させる5αリダクターゼを持っていますが、これは頭頂部より前頭部に集中して存在します。男性ホルモンの影響を受けやすいことから、前頭部全体も比較的薄くなりやすいといえます。
AGAのメカニズム
AGAを発症させる主因子は、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロンです。この物質は、ある特定の酵素と男性ホルモンが結合して生成されます。男性ホルモンとジヒドロテストステロンの関係
一般的に男性ホルモンとは、男性の生殖機能や体毛の成長に大きく関わるテストステロンを指します。男性特有の機能の維持・発達に大きな働きを持つホルモンですが、これは薄毛を助長させる直接的な原因物質ではありません。AGAの原因となるのは、ジヒドロテストステロンという物質で、これは5αリダクターゼという酵素とテストステロンが結びついて生まれます。つまり、5αリダクターゼをたくさん持つと、ジヒドロテストステロンを生みやすくなり、薄毛の潜在リスクも高まるのです。
5αリダクターゼ酵素とは?
すでに述べた通り、5αリダクターゼとは、正常な男性ホルモンをジヒドロテストステロンへと変換させる酵素です。これには「1型5αリダクターゼ」と「2型5αリダクターゼ」の2タイプがあり、分泌しやすい場所に違いが見られます。1型は、側頭部や後頭部の皮脂腺、2型は前頭部や頭頂部の毛乳頭に多く存在します。分泌量には個人差があり、酵素を多く持つ体質の人ほどその働きが活発となり、AGAとなるリスクも高まります。
ジヒドロテストステロンの感受性
男性ホルモンの中でも、5α リダクターゼと反応しやすいものがあります。これを「ジヒドロテストステロンの感受性」といいます。この感受性が高い男性ホルモンほど、ジヒドロテストステロンになりやすく、薄毛の進行スピードも早くなるでしょう。感受性の差は、遺伝子配列によって決まると考えられています。男性ホルモン受容体の遺伝子には6つの領域があり、その第1の塩基配列のパターンによって、感受性が高いか低いかが決定されます。つまり、塩基配列「C-A-G」「G-G-C」の繰り返しが、40回以下だと感受性が低く、それ以上だと高い、という判断がなされます。
AGAの原因
AGAとなる原因はさまざまですが、その中でも影響が大きいといわれるのが、下記の3点です。遺伝
いくつかある要因の中でも、遺伝は無視できないファクターです。遺伝には母の家系と父の家系の2つがありますが、AGAに深く関わるのが「母方の祖父」の遺伝子です。母親から受け継がれる遺伝子はX染色体といって、これは個人が持つ体質の形成に大きな役割を果たします。つまり、母方の祖父がAGAの主因である5αリダクターゼを多く持つ体質の人だと、それを受け継いだ家族も薄毛になりやすい可能性を秘めています。
ストレス
ストレス過多が続く場合も要注意です。ストレスがたまると、体中の血管が収縮反応を起こし、血流が悪くなります。血流が悪化すると老廃物がたまり、肌のターンオーバーも停滞するでしょう。細胞の更新も悪くなった結果、髪の毛を生やす毛母細胞の成長も止まり、薄毛や抜け毛の原因となる恐れがあります。血行不良によって悪くなるのは新陳代謝の機能ばかりではありません。血管は体内に必要な栄養素を運ぶ大切な器官であり、そこで機能障害が起これば体のいたるところで栄養不足を招きます。栄養は生命維持に必要な内臓を優先して送られますので、必然的に髪の毛への栄養補給が滞ってしまうのです。
生活習慣
生活習慣の中でも、特に重視したいのが食生活です。髪の毛はケラチンと呼ばれるタンパク質が約90%を占めるといわれます。そのタンパク質は約20種類のアミノ酸によって構成され、そのうちの多くが普段の食事によってでしか摂取できません。つまり、意識的に食事の中でタンパク質を摂取しないと、栄養源が失われ、薄毛の進行を早めてしまうことが考えられるのです。タンパク質だけでなく、亜鉛やビタミン、ミネラルなども髪の毛の成長に良いとされます。これらの栄養素の豊富に入った食事を心がけるだけでも症状の改善に期待が持てるでしょう。
AGAの治療方法
育毛治療薬や植毛施術など、AGAの症状を克服する方法や対策はさまざまです。ここでは代表的な4つをご紹介します。治療薬
発毛・育毛用として開発された治療薬を使ったAGA対策です。育毛促進薬と呼ばれるものはたくさんありますが、よく知られているのがミノキシジルです。これは、血管を広げて血流を促進し、毛母細胞や毛乳頭の働きを活発にすることで知られる治療薬です。効果が期待できる反面、治療薬なので副作用のリスクもあり、費用もそれなりに高額です。効果が現れるまで一定の期間が必要なため、根気よく使い続けることが大切です。植毛
植毛とは、毛を移植する施術療法です。薄くなっている頭皮の上から髪の毛を新たに移植するというもので、これには人工的に作り出した髪の毛と、自分の持つ毛を移植させる2つの方法があります。人工毛の場合、細胞メカニズムの異なる物質を人工的に植毛させるため、免疫が働いて拒絶反応の可能性があります。一方、自毛植毛は主に後頭部からの移植となるため、人工毛が持つようなリスクの心配は少ないとされています。ただし、後頭部にはライン状の傷が生まれるので、外見を損なうなどのデメリットを考慮する必要があります。
HARG治療
HARG療法とは、毛根の再生治療のことです。人間細胞の根幹となる幹細胞から150種類以上ものタンパク質系物質を頭皮に直接注入して発毛を促進する治療法です。外部から直接髪の毛の発育に重要な物質を注入することで、髪の毛の成長因子が活発に分泌され、継続的な発毛につながります。AGAの治療は主に男性が対象となりますが、この治療方法は女性にも効果があるとされ、なおかつ副作用の可能性も低いというメリットがあります。
メソセラピー
メソセラピーとは、AGAに関する専門知識を持ったドクターが行う薄毛治療です。育毛サロンや美容室で行う施術と違い、医師が専門的見地から治療を行うところに最大の特徴があります。具体的には、注射や処方薬、レーザー治療などの処置で改善を試みます。薄毛になった原因や脱毛のレベルに応じた適切な処置を施してくれますので、男性・女性問わず安心して治療に臨めます。デメリットといえば、その高額な費用です。メソセラピーは基本的に保険診療の対象外ですので、患者さんの全額自己負担となります。多くの医療機関では、無料カウンセリングを設けていますので、そこでじっくり相談してから治療に入るのも遅くないでしょう。
AGA治療はどこで受ける?
AGAに関する専門治療を受けるとなった場合、皮膚科か専門クリニックのどちらかを受けることになります。皮膚科
皮膚科では主に、プロペシアと呼ばれる医薬品を用いた治療が実施されます。プロペシアにはAGAの原因物質であるジヒドロテストステロンの生成を防止する効果を持っています。抜け毛や薄毛の進行をストップし、残された髪の毛を守るうえで期待できる治療薬です。皮膚科はAGAの症状を抑制することに主眼を置いた治療が行われます。そのため、薄くなった頭皮から新たに発毛を促す目的の治療は実施されません。抜け毛の進行抑制に注力したい場合に選ぶのがポイントといえます。
AGAクリニック
AGAクリニックでは、皮膚科で処方されるプロペシアに加え、上記で紹介した発毛効果のあるミノキシジルなどの治療薬を使って育毛アプローチを図ります。また、治療薬はその2つに限らず、内服薬や外用薬など、発毛と育毛に効果のある治療薬を幅広く取りそろえ、それぞれの原因や症状に合わせて合理的に治療法を選択できるメリットがあります。薬を使ったアプローチ以外にも、頭皮の肌荒れなどを回復させる再生療法を取り入れているクリニックもあります。
おわりに
AGAの症状や原因物質、発生までのメカニズム、または効果的な治療方法について説明しました。一口にAGAといっても、その原因や症状は個人差があり、種類もいくつかに分かれます。遺伝による影響も無視できないでしょう。しかし、薄毛や抜け毛がはじまったからといってあきらめる必要はありません。専門の治療期間や施術方法は豊富にありますし、新たな技術を用いた再生療法の研究も進んでいます。まずはAGAの原因を正確に突き止め、信頼できる専門機関を探しながら、自分に合った対処方法を選択してください。