【監修あり】もずくに含まれる栄養素の髪への効果は?一日あたりの摂取量をご紹介

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「海藻を食べると髪が生えてくる」といった話を耳にしたことはありませんか?とはいえ、信じていない方も多いはず。
しかし近年、もずくに含まれる成分が髪や頭皮に良い影響を与えるとされ、注目を集めています。
この記事では、もずくの注目成分やその他の栄養素の働きや髪への効果について解説します。
また、おすすめの食べ方やもずくを使ったレシピなどを紹介しますので、薄毛や頭皮環境が気になる方は、ぜひ参考にしてください。

もずくの注目成分「フコイダン」とは?

フコイダンとはもずくやめかぶ、昆布といった海藻に含まれるヌルヌル成分で、水溶性食物繊維の一種です。
数ある海藻の中で最もフコイダンの含有量が多いのがもずくです。 フコイダンは海藻が傷ついたときや引き潮で水面から出てしまった際に、乾燥や細菌から自らを守る働きがあります。
1913年にスウェーデンの科学者によって発見されて以来、医学界で注目を集めています。 がんや生活習慣病などに効果があるとされ、世界中でさまざまな研究が進められている成分です。

フコイダンの効果

フコイダンには生活習慣病の予防や血流の改善、肝機能の向上などさまざまな効果があります。
一見髪とは関係がないように思えますが、体の内側を整えることで、髪や頭皮の健康につながっていくのです。
ここでは、フコイダンの効果についていくつかご紹介します。

血流の改善

フコイダンには血中のコレステロール値や血糖値を下げる働きがあり、血流の改善に効果的です。
健やかな髪を生やすためには、毛根に存在する「毛乳頭」という細胞に髪の原料となる栄養を送り届ける必要があります。 血流が悪くなって毛乳頭に栄養が行き届かなくなると、髪の発育を促す働きが悪くなり、新しい髪が生えてこなくなる可能性もあるのです。
血液中に糖や脂質が過剰に含まれていると、血液がドロドロになってしまい、血管内をスムーズに移動できません。
フコイダンは血液の凝固を防いで、血液をサラサラにしてくれるので、全身に栄養や酸素を届けられます。 血液がサラサラの状態を保つことで、髪の健康維持につながります。

肝機能の向上

フコイダンは肝機能の向上にも役立ちます。 肝臓は再生能力が高く、3分の2を切除してもおおよそ2週間で元の大きさに戻り機能も回復するといわれています。
その再生能力に大きく関わっているのがHGFという物質です。
HGFは肝臓だけでなく腎臓や肺、皮膚、血管などさまざまな組織の再生を促す効果があり、髪の毛の成長にも作用することが確認されています。
また肝臓は、健康な髪を作るために重要な臓器です。 食事から摂ったたんぱく質は小腸でアミノ酸に分解されて、肝臓に貯蔵されます。
そこで髪に必要な「血漿たんぱく質」が作り出され、毛根に運ばれます。
そのため、肝臓が弱っていると血漿たんぱく質の合成が滞り、薄毛や抜け毛につながってしまうのです。 お酒を飲む人はとくに肝機能が低下しやすいので、肝機能の向上に効果があるフコイダンを積極的に摂取するのがおすすめです。

頭皮の健康維持

フコイダンには抗酸化作用による美肌効果があるため、頭皮の健康にも役立ちます。 抗酸化作用とは細胞を傷つける活性酸素の働きを抑えること。
りんごを切ると切り口から茶色く変色するのと同じような現象が、私たちの体の中でも起こっているのです。
頭皮に活性酸素が蓄積されると毛を生成する毛母細胞が攻撃され、髪の成長が妨げられます。 また頭皮の皮脂が過酸化脂質と呼ばれる有害な物質に変化します。
過酸化脂質は水やシャンプーだけでは落ちにくい物質で、ニオイやかゆみ、赤み、フケといった頭皮トラブルの原因になってしまうのです。
抗酸化作用があるフコイダンを取り入れることで、これらの頭皮トラブルの改善が期待できます。

もずくの栄養成分

もずくにはフコイダン以外にも、髪や頭皮の健康に欠かせない栄養素が含まれています。

食物繊維

もずくにはフコイダンやアルギン酸といった食物繊維が豊富に含まれていて、腸内環境を整えてくれます。
腸内環境が悪化すると有害物質が発生し血管を通して全身に運ばれます。 有害物質が頭皮まで到達するとかゆみや赤みなどを引き起こす恐れがあるのです。
また、腸内環境と円形脱毛症には関連があると考えられています。
円形脱毛症は、自分の毛根を異物と勘違いして攻撃してしまう「自己免疫疾患」を原因とする説が有力です。(2023年1月現在)
腸には病原菌やウイルスを退治してくれる免疫細胞が集まっており、その数は全身の約70%を占めるといわれています。 そのため、円形脱毛症は腸内環境の悪化が原因になると考えられています。
実際に健康なドナーの腸内細菌を移植したところ、脱毛症が改善したという研究もありました。 腸内環境と髪との関係性はまだ解明されていませんが、腸内環境を整えることで髪や頭皮の健康効果が期待できます。

βカロテン

もずくには、かぼちゃやにんじん、ほうれん草といった色の濃い野菜の色素成分である「βカロテン」が豊富です。
βカロテンは体内でビタミンAに変換されるため、プロビタミンAとも呼ばれています。 生活習慣病の予防やのどや鼻、消化器などの粘膜を正常に保ち、細菌の感染や乾燥を防ぐ働きがあります。
また、皮膚の新陳代謝を高める作用があるため肌や頭皮の健康維持にも有効です。
さらにβカロテンには、強い抗酸化作用もあります。 フコイダンにも抗酸化作用があるため、相乗効果が期待できます。
βカロテンが不足すると肌の乾燥やニキビなどにつながるので、積極的に摂取することが大切です。

カルシウム

髪色はメラニンの種類と量によって異なり、メラニンが大きく量が多いほど髪が黒く見えます。 加齢やストレス、生活環境などによってメラノサイトという細胞が機能しなくなると、メラニンが作られず、白いままの髪が生えてきてしまうのです。
カルシウムは、色素細胞を活性化させる働きがあるため、白髪予防に効果が期待できます。 また、カルシウムはイライラを鎮め、神経を安定させる働きもあります。
ストレスは抜け毛の原因となるため、カルシウムを意識して摂るようにしましょう。

マグネシウム

髪の主成分となるたんぱく質「ケラチン」は、数種類のアミノ酸を合成して作られています。
また頭皮や血管などの細胞の構成成分もすべてたんぱく質です。 マグネシウムには、たんぱく質の合成をサポートする働きがあるため、髪や頭皮の健康に欠かせない栄養素です。
また、たんぱく質が不足するとメラニン色素の原料である「チロシン」が不足するため、白髪が生えやすくなります。
さらに、マグネシウムには血流を促す作用もあるため、食事から摂った栄養や酸素を頭皮まで届けることができます。

ヨウ素

ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料となるミネラルです。 甲状腺ホルモンは体の中に取り込んだ栄養をエネルギーに変える働きに関わっていて、基礎代謝を増やす働きがあります。
また、たんぱく質の合成にも関与しており、胎児の成長や子どもの発育を促す役割があります。
そのため、細胞の生まれ変わりが盛んな髪や頭皮の健康には欠かせない栄養素です。

もずくの一日の摂取量は?

もずくは甲状腺に異常を抱えている人が食べ過ぎると、甲状腺腫や甲状腺機能の低下などが起こります。
ヨウ素の1日の推奨量は18歳以上で約130μg。 もずく100gあたりのヨウ素含有量は140μgなので、100g食べれば1日のヨウ素をすべて摂取できる計算になります。
健常な人であればもずくの食べ過ぎでヨウ素過剰症になる可能性は低いですが、栄養バランスを考慮し、市販のもずく酢「1パック」程度を目安に食べるといいでしょう。

もずくのおすすめの食べ方

ここからは、もずくのおすすめの食べ方をご紹介します。

もずく酢

もずくと酢は相性がいいため、シンプルに酢の物で食べるのがおすすめです。
もずくと酢を和えると水溶性食物繊維がやわらかくなり、フコイダンを体内に取り入れやすくなります。 また酢には血液をサラサラにする効果があり、もずくと組み合わせることで髪や頭皮の健康にダブルの効果が期待できます。
なお、もずく酢を食事のはじめに食べると糖質の吸収がおだやかになり、肥満予防や美肌に効果的です。

スープや味噌汁

フコイダンは水に溶けやすい水溶性食物繊維なので、スープや味噌汁に使うことで体内に吸収されやすくなります。 もずくは長時間加熱する必要がないため、あとから具材を追加したいときや忙しいときなどにも短時間で作れるのもうれしいところ。
スープや味噌汁にもずくを入れると磯の香りがふわっと広がり、もずくのツルッとした食感が楽しめます。 もずく入りのフリーズドライスープなども販売されているので、そういったものを試してみるのもおすすめです。

炒め物や天ぷら

海藻に含まれるβカロテンは体内で吸収されにくく、調理法や一緒に食べる食品、食べる人の栄養状態などによって、吸収率が3~96%と大きく変化するのが特徴です。
また、β-カロテンは熱に強いため、調理による損失がほとんどありません。 油と一緒に調理すると吸収がよくなるので、炒め物や天ぷらなどにして食べるのもおすすめです。
沖縄では肉や野菜と一緒にもずくを炒めてごはんに乗せた「もずく丼」や沖縄式のお好み焼き「もずくヒラヤーチー」がよく食べられています。

もずくを使ったレシピ

もずくを食べるとなると、いつもワンパターンになってしまうという方も多いでしょう。 続いては、もずくのレシピをご紹介します。

もずくと春雨のサラダ

市販のもずく酢をそのまま使ったさっぱりとした味わいのサラダです。 簡単に作れるのであと一品足りないときにおすすめです。

材料(2人分)

・市販のもずく酢…2パック
・ロースハム…2枚
・春雨…30g
・水菜…1/3束
・すりごま(白)…大さじ1/2
・ごま油…小さじ2
・練り辛子…小さじ1/2
・醤油…少々

作り方

1.春雨は熱湯に7~8分つけてもどして水気をきり、食べやすい長さに切ります。ハムは細切り、水菜は4~5cmの長さに切ります。
2.ボウルにごま油と練り辛子、醤油、もずくをタレごと入れて混ぜ合わせます。1とごまを加えてさっと和えたら完成です。

もずくとかにかまのスープ

もずく酢を丸ごと使って作る簡単スープです。 お湯を入れるだけでできるので、忙しいときや夜食にもおすすめです。

材料(2人分)

・市販のもずく酢…1パック
・かに風味かまぼこ…2本
・ねぎ…少々
・砂糖…小さじ1
・醤油…小さじ1/2
・顆粒とりがらスープの素…小さじ1/2
・おろししょうが…少々
・熱湯…200ml
・ラー油…お好みで

作り方

スープカップにほぐしたかに風味かまぼことそのほかの材料を入れ、熱湯を注ぎます。 よくかき混ぜ、お好みでラー油をかけたら完成です。

もずくのチヂミ

もずくの食感が楽しめる、お酒のつまみにぴったりな一品です。 おかずにもおやつにもおすすめです。

材料(2人分)

・もずく(生)…60g
・にんじん…1/3本
・ニラ…1/2束
・ごま油…大さじ2
・ポン酢…大さじ1
・卵…1個
★薄力粉…70g
★片栗粉…30g
★塩…小さじ1/2
★和風だしの素…小さじ1
★水…大さじ3

作り方

1.もずくは水気をしっかりきって、食べやすい長さに切ります。
2.にんじんは千切り、ニラは3cmの長さに切ります。
3.ボウルに卵を割りほぐし、★を加えて混ぜ、もずくとにんじん、ニラを加えて混ぜ合わせましょう。
4.フライパンに半量のごま油(大さじ1)をひいて熱し、3を流し入れ、こんがりと焼き色が付くまで弱火で5分焼きます。
5.裏返してフライパンのふちから残りのごま油を加え、表面がカリッとするまで焼き色をつけます。
6.食べやすい大きさに切ってお皿に盛り付け、ポン酢を添えたら完成です。

おわりに

もずくには「フコイダン」という食物繊維が含まれており、生活習慣病予防や美肌、薄毛への効果が期待されています。
未だ研究段階ではありますが、もずくが健康にいいことは間違いありません。 また、もずくにはβカロテンやカルシウム、マグネシウムといった栄養素も豊富です。
栄養が豊富なもずくを食べて体調を整えることで、髪や頭皮にいい影響を与えてくれます。 薄毛や白髪の対策にぜひ取り入れてみてくださいね。


監修者:安達春香
3年間栄養士として実務経験を積んだ後、管理栄養士免許を取得。現在はフリーランスのWebライターとして、栄養に関する記事を専門に扱い、数多くのメディアにて執筆。難しく答えの出にくい栄養に関する知識をわかりやすく伝えることをモットーに活動中。