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近い将来、本格的な毛髪再生医療が実現するかもしれません。
国内では、資生堂と京セラが毛髪再生にかかわる独自技術を開発中で、実用化に向けて研究を進めています。2つのメーカーが研究開発に取り組んでいる再生医療の技術とは、具体的にはどのようなものなのでしょうか?
今回は、実用化が期待される最新の再生医療技術についてご紹介します。
国内では、資生堂と京セラが毛髪再生にかかわる独自技術を開発中で、実用化に向けて研究を進めています。2つのメーカーが研究開発に取り組んでいる再生医療の技術とは、具体的にはどのようなものなのでしょうか?
今回は、実用化が期待される最新の再生医療技術についてご紹介します。
資生堂の毛髪再生医療
どんな技術?
資生堂が開発している技術が、採取・培養した患者自身の細胞を、脱毛部分に移植することで髪の毛を増やす移植療法です。採取・培養に使われるものは毛球部毛根鞘(しょう)細胞で、これは毛母細胞のある毛球部を鞘のように覆っていることから、そのように呼ばれます。毛球部毛根鞘(しょう)細胞が持つ毛髪作成能力に資生堂が着目し、現在最先端治療の実用化に向け治験を行っている段階です。
メリット
このアプローチによる移植方法では、自家細胞(患者自身の細胞)を使って髪の毛の再生に生かすため、アレルギー反応などの副作用リスクはほとんどないと考えられます。また、再生医療は採取した細胞を体外で培養する仕組みのため、植毛のように「手術の傷跡が残る」または「移植した後頭部の毛根が再生しない」などといったデメリットがほぼないというのも特徴です。
京セラのデバイス大量生産技術
京セラでは、理化学研究所と共同で毛髪再生医療に用いる「デバイス大量生産技術」の開発を進めています。この技術もまた、自家細胞を使った移植療法です。デバイス大量生産技術とは?
京セラが開発中のデバイス大量生産技術は、基本的には資生堂の治療アプローチと同じ原理です。つまり、元気な髪の毛の自家細胞を後頭部から採取し、体外で培養して薄くなった部分に移植するという方法です。京セラと資生堂との大きな違いとして、頭皮から取り出して培養する細胞の違いが挙げられます。
資生堂は毛球部毛根鞘(しょう)細胞という細胞を培養しますが、京セラは毛乳頭細胞と上皮性幹細胞の毛包と呼ばれる毛根組織の一部を採取し培養します。
毛包とは、毛根を保護しつつ、髪の毛が伸びるルートを確保する重要組織です。この毛包が減ると、髪の毛のバリアー機能が失われ、抜け毛を増やすといわれています。つまり、毛包を体外で培養して髪の毛を増やす点が、デバイス大量生産技術の肝というべき部分なのです。
メリット
デバイス大量生産技術を用いれば、少量の頭皮の採取で広い範囲の脱毛部分を再生させることができます。これまでの植毛治療より傷跡も小さく済み、施術に多くの時間をとられる心配もありません。患者負担の大幅軽減が期待できるでしょう。実用化はいつ?課題は?
京セラと資生堂が開発中の脱毛治療の技術には、実用化に向けての課題もあります。実用化はいつごろ?
どちらの企業も、2020年の実用化を目指し研究開発を進めています。高度な開発技術が必要とされるため、実用化の時期が伸びてしまうことも十分予想されますが、それでもこれらの治療技術が将来的に実現した場合、薄毛治療技術も大きく進歩することでしょう。費用はどのくらい?
近い将来実用化されたとしても、施術費用が高額になることが予測されるため、それが大きな壁となるかもしれません。現在、脱毛治療として有効な植毛施術は、だいたい30~100万円かかるといわれています。上記2つの再生医療も実用化後すぐは当然自由診療となることから、同じくらいの金額になる可能性が高いとみて良いでしょう。
再生治療を一般化できるかが今後の課題となりそうです。
おわりに
資生堂と京セラが研究中の毛髪再生医療は、脱毛リスクの低い自家細胞を使っての移植技術のため、精度も安心度も高く、実用化できればAGAの治療も大きく前進します。しかし、実用化にはまだ時間がかかり、医療現場で利用できるようになっても高額な費用がネックとなる可能性が高いでしょう。医療技術の進化は日進月歩です。引き続き、今回ご紹介した毛髪再生技術などを始めとした薄毛治療分野の動向に注目しましょう。