【医療監修あり】白髪が元の髪色に戻る?その条件と理由

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「生え始めた白髪は元の髪色に戻せるのだろうか?」
白髪に悩む方が一度は抱く疑問ではないでしょうか。
白髪は加齢による自然な変化とされることが多いですが、近年の研究や技術の進歩により生活習慣の見直しや適切なケアを行うことで元の髪色に戻る可能性が注目されています。(2024年12月現在)
この記事では白髪の原因とそのメカニズム、さらに元の髪色に戻すための有効な方法について解説します。 セルフケアから医学的治療まで、白髪にアプローチする多様な選択肢を知り、適切な対策を考えてみましょう。

白髪になる原因

なぜ白髪になるのか?そもそも人の髪の毛は本来すべてが白髪なのです。
髪の毛が生えてくる前に色素細胞が色素を作り出し、白い髪の毛に着色します。 色素細胞は、毛根の毛母細胞に隣り合わせに存在して作り出した色素を速やかに髪の毛に届けます。
人体が作り出す色素はメラニンと呼ばれていて、その中でも髪の毛を着色するものには「ユーメラニン」と「フェオメラニン」の2種類があります。
この色素がなんらかの要因により、髪の毛への着色がされずに成長した毛が白髪が生えてくる原因です。

色素細胞の働きが悪くなる

髪の毛の色がつくか否かは、毛根付近にある「メラノサイト(色素細胞)」の働きによって決まります。
色素細胞がメラニン色素を生成するのですが、メラノサイトの働きがなんらかの要因により低下するとメラニンの生成が減少し、髪の色がなくなります。

色素が作られなくなる

さらに色素細胞が完全に機能を失うとメラニン色素が作られなくなります。 メラニン色素が作られなくなれば、髪の毛も着色されません。
色素細胞が完全に働きを停止して着色されない状況は「不可逆的な白髪」となります。

色素の元となる成分が不足する

髪のメラニンを生成するには色素を作り出すための栄養素が必要です。 色素の元となる栄養素が不足すると色素生成が滞り、白髪が増えることがあります。
髪の色素に関与する代表的な栄養素は以下の通りです。
チロシン:メラニン生成の出発点となるアミノ酸でこれが不足するとメラニンの産生が抑制されます。
ビタミンB12や鉄分:メラニン生成の過程をサポートする栄養素で、これらが不足すると色素形成に必要な酵素の働きが弱まります。
銅:チロシナーゼという酵素の活性を高める役割があり、不足すると髪の色素生成に影響を与えます。
特に食生活の乱れや極端なダイエットはこれらの成分不足を引き起こし、白髪の原因の一助となります。

白髪の原因を作り出す要因

白髪は色素細胞の働きの低下や色素生成の低下により起こりますが、その要因は外的・内的などさまざまです。 主な要因について詳しく解説します。

加齢

白髪の最も一般的な原因は加齢です。
加齢により細胞の働きが衰えると、色素細胞がメラニン色素を生成する能力が低下します。
さらに加齢により毛根の血流が悪くなることで、色素細胞に必要な酸素や栄養が届きにくくなることも影響します。
一般的に加齢による白髪の進行は不可逆的なことが多く、自然な老化現象の一つとされています。

生活習慣の乱れ

不規則な生活習慣は白髪を招く要因となります。 生活習慣の乱れにより白髪になっている場合、さまざまな要因が複雑に絡み合って生じているケースも少なくありません。
①栄養不足
色素細胞が色素を作り出すための栄養が不足している場合に、白髪が生じることもあります。 特に鉄分、ビタミンB12、銅などの不足はメラニン生成に影響を与えます。
②睡眠不足
各種ホルモンの分泌が減少すると髪の毛の健康が損なわれやすくなります。 特に成長ホルモンに影響を及ぼします。
成長ホルモンは、入眠後1〜2時間くらいのタイミングで最も多く分泌されることがわかっています。 睡眠不足や質の悪い睡眠は、健やかな髪の毛の成長の働きを阻害する要因の一つです。
③過度な飲酒や喫煙
飲酒や喫煙は、各種細胞にダメージを及ぼす活性酸素が増加する要因です。 毛根細胞や色素細胞にもダメージを与え、白髪につながる可能性があります。

紫外線

紫外線は頭皮や髪に悪影響を及ぼし、白髪につながる可能性があります。
紫外線を過剰に浴びると色素細胞にもダメージを与え、メラニンの生成を妨げるだけでなく、活性酸素が発生し細胞老化を促進します。 いま生えている髪の毛だけでなく、これから生えてくる髪の毛の成長にも影響を及ぼすのです。
また、日焼けにより頭皮の水分を奪い、乾燥や炎症を引き起こすこともあります。

頭皮環境の悪化

不衛生な頭皮環境や、適切でないヘアケアも白髪の一因です。
毛穴が詰まることで頭皮が硬くなり血流悪化につながりかねません。 毛細血管の血流が悪くなれば、毛根への栄養供給が妨げられます。
また、反対に過剰なシャンプーや刺激の強い製品の使用により頭皮が乾燥し、炎症を起こすこともあります。
頭皮環境が悪化すると頭皮や毛根へのダメージとなり、色素細胞の働きが弱まることもあります。

ストレス

慢性的なストレスは、交感神経が優位な状態になります。 交感神経が優位な状態は、血管を収縮させるので血流を悪化させます。
血流が悪くなると、毛根に十分な栄養が届かなくなる要因となります。 また、ストレスによりノルアドレナリンの過剰分泌が起こると白髪につながってしまうという 研究結果もあります。

遺伝

白髪の発生には遺伝的要因の可能性が以前から示唆されていました。
親や祖父母が白髪の傾向にある場合、毛包幹細胞の寿命や色素細胞の再生能力に影響を与える遺伝的要因が関係している可能性は十分に考えられています。
実際に、白髪の要因として「遺伝的要因に加えて環境要因も影響を及ぼしている」と発表している 論文もあります。
白髪と遺伝に関して、はっきりとした因果関係が解明されているわけではないのですが、さまざまな研究者達により、「遺伝的な影響」の解明が少しづつ明かされているのは事実です。

なんらかの関連性疾患

色素細胞の働きや色素の産生に関わるいくつかの疾患も白髪の原因になります。
①甲状腺疾患
甲状腺はさまざまなホルモンの産生や分泌に関わる臓器です。 甲状腺疾患によりホルモンバランスが乱れ、毛髪の色素形成に影響を与える場合があります。
②貧血
貧血とは、一般的に酸素を運搬する赤血球やヘモグロビンが不足している状態です。 貧血になると血中の酸素運搬能力が低下し、毛根に酸素や栄養が行き渡らなくなります。
③尋常性白斑
尋常性白斑は自己免疫疾患の一つです。 自己免疫反応により色素細胞が破壊され、毛髪の着色にも影響を及ぼします。
また、ビタミンB12欠乏やポリポーシス(多発性腺腫症)などの疾患も白髪との関連が指摘されています。
一般的に疾患が要因による白髪であれば、その病態の治療や治癒により、白髪症状が改善する場合もあります。

白髪を元の髪色に戻すには?

白髪が生えてきてお悩みの場合、白髪を元の髪色に戻したいと考える人もいるでしょう。
白髪を元に戻したいと考えた時に、原因や状況により戻る可能性も十分にあります。
特に生活習慣や栄養バランスの乱れ、ストレスなどが原因で色素細胞の働きが低下して起こっている場合や、色素の原料がただ不足している場合には適切な対処を行うことで元の髪色に戻せる可能性もあるでしょう。

セルフケアでできる対処法

日常生活の中で自分でも行える対策を取り入れることで白髪の進行を防ぎつつ、色素細胞の回復を促すセルフケアを試みましょう。

生活習慣の改善

健康な生活リズムを保つことが白髪の予防や改善のサポートになり得ます。 不規則な生活は体内のホルモンバランスを崩し、毛髪の健康にも悪影響を与える可能性があります。
以下にできる対策について解説します。
①睡眠の質を高める
髪の毛の健やかな成長を促し、健康的な毛髪を目指すならホルモンバランスを整える睡眠を意識したいところです。 各種ホルモンの健やかな分泌を目指すなら、可能であれば7〜8時間の睡眠を意識したいところです。
特に成長ホルモンは入眠後1〜2時間後の深い眠りの間に分泌され、髪の毛や肌の再生を促します。
もし睡眠時間の確保が難しい場合には、睡眠の質を意識してみましょう。 深い眠りが得られれば、入眠後の成長ホルモンの分泌が期待できます。
②禁煙・節酒
タバコや過度な飲酒は血行を悪化させ、髪の毛の成長に必要な栄養が届きにくくなります。 また、体の中で活性酸素を生み出し、細胞へのダメージが大きくなります。色素細胞もその例外ではありません。

運動や紫外線対策を取り入れる

運動習慣を取り入れることで血流が改善し、毛根や頭皮に十分な酸素と栄養を届ける一助になります。
ウォーキングやヨガは誰にでも取り入れやすい有酸素運動です。 毎日の中で少しずつ、できることから始めてみましょう。
また、頭皮の健康を意識するなら紫外線対策も重要です。
紫外線は頭皮の色素細胞にダメージを与え、白髪の一因となり得ます。 帽子や日傘、UVカットスプレーなどを使用し、頭皮を保護しましょう。

ストレスを減らす

ストレスは白髪の主要な原因の一つです。
普段からストレスを溜め込まないよう趣味やリラクゼーション法を取り入れ、適度にリフレッシュする習慣をつけることも大切です。
また、適切な休息を意識的に取ることも重要です。 過度な労働や精神的負担を自覚しているなら、リフレッシュタイムを積極的に設けることを意識しましょう。

血行促進のためのセルフマッサージ

頭皮マッサージは血行を促進し、色素細胞や毛母細胞に栄養を行き渡らせるための一助となり得ます。
頭皮を押すように優しくマッサージしましょう。指の腹を使い、頭皮の負担とならないように意識しましょう。
入浴時や入浴後の温かい状態でマッサージを行うと、さらに効果的です。
逆に、爪を立てたり過度な摩擦は頭皮ダメージにもなるので気をつけましょう。

意識的に栄養素を補う

食事から摂取する栄養素は、髪の毛の色素を生成するための成分となります。
また、髪の毛の健康を支える重要なサポートにもなります。特に以下の成分を意識して摂取しましょう。
ビタミンB群(豚肉、卵、大豆製品):髪の毛の成長を促進
鉄分(レバー、ほうれん草):酸素を運ぶヘモグロビンを形成
銅(ナッツ類、甲殻類):メラニン生成をサポート
亜鉛(牡蠣、カボチャの種):髪の毛の細胞分裂に欠かせないミネラル
タンパク質:髪の毛の主要成分であるケラチンの材料

医学的な治療によって改善を試みる

白髪対策としてセルフケアを取り入れてみても改善が難しい場合、専門医の診察を受け、医学的な治療を検討することも有効な対策の一つです。
ここでは、白髪改善に効果が期待できる専門的な治療について紹介します。

内服治療

内服薬による治療は、医師の診断に基づく処方が必要です。
鉄分やビタミンB12などのビタミンやミネラルが不足している場合、内服薬で補うことで改善が期待できます。 また、ホルモンバランスが要因で髪の毛の健やかな成長に悪影響を及ぼしている場合にも、髪の毛の成長に伴う機能の改善が期待できます。

外用薬での治療

外用薬を使用することで直接的に頭皮や毛根のケアを試みます。
頭皮の血行を促進し、毛根の環境を整える作用が外用薬に期待できる主な効能です。

毛髪再生治療

毛髪に関する再生医療が近年注目を浴びており、白髪改善の可能性を広げています。(2024年12月現在)
特に注目を高めているのが幹細胞治療です。 自分の幹細胞を利用して毛根の働きをを再生し、白髪や薄毛の改善を期待されています。
また、成長因子と呼ばれる成分を抽出し、治療する方法も増えてきました。 成長因子は毛根の働きを促したり、血行を促進したりと含まれている成分によりさまざまな髪の毛の健康につながる効果が期待できます。

まとめ

白髪を元の髪色に戻すことを試みた場合、原因に応じた適切なアプローチが必要です。 生活習慣の改善や栄養の補給、ストレス管理といったセルフケアで、まずは対策してみましょう。
セルフケアでの改善が見込めない場合には専門医の診断を受け、医学的な治療で白髪対対策を検討するのも良いでしょう。
2024年12月現在、最新の研究では毛髪再生治療など、再生医療の発展が白髪改善の可能性を広げています。 白髪のメカニズムを理解し、自分に合った方法でケアを行うことで髪の毛の健康を守り、若々しい印象を取り戻す一歩を検討しましょう。


監修者:繁和泉
看護師、予防医学士として17年。その中で毛髪再生外来の診療に携わる。薄毛にともなう患者さんのお悩みに寄り添いながら、医学的なアプローチも含め「長い目で見た」毛髪のための日常生活やケアについての指導を個別性に合わせて提供。 同時に、情報化社会の中でWEBコンテンツで「正しい情報をわかりやすく」発信することに精を出す。