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ふと頭を触っていたら、一部分だけ髪の毛がごっそりと抜け落ちて、髪が生えていない箇所が見つかった――。円形脱毛症とは、頭部に500円玉くらいの大きさの脱毛が1つ、または複数生じる症状のことです。
円形脱毛症は女性や子どもにも起こりうるためひとごとではなく、いつ自分の身に起こってもおかしくないものとして認識しておく必要があります。
今回は、女性や子どもにも身近な、さまざまな脱毛症の原因と対処法についてお伝えします。
円形脱毛症は女性や子どもにも起こりうるためひとごとではなく、いつ自分の身に起こってもおかしくないものとして認識しておく必要があります。
今回は、女性や子どもにも身近な、さまざまな脱毛症の原因と対処法についてお伝えします。
女性の脱毛症の症状
薄毛や抜け毛と言うと、一般的には「男性型脱毛症(AGA)」のイメージがありますが、女性にも脱毛症が起こることがあります。意外と身近な女性の脱毛症について、きちんと理解しておきましょう。びまん性脱毛症
びまん性脱毛症とは、髪の毛が全体的に薄くなる症状のことです。女性のびまん性脱毛症は略して「FAGA」と呼ばれ、多くの女性を悩ませています。これは、いわゆる男性型脱毛症と同じように、男性ホルモンが原因となって起こります。男性ホルモンのテストステロンが変化してできる「ジヒドロテストステロン」という物質が、髪の毛の成長サイクルに影響を与えることで、薄毛や抜け毛が生じるという仕組みになっているのです。さらに、加齢による女性ホルモンの減少も、原因の1つです。女性ホルモンが減少すると、男性ホルモンが優位になり、結果としてFAGAにつながってしまうのです。
また、過度のダイエットやストレスによりホルモンバランスが崩れるのも、びまん性脱毛症の原因となり得ます。十分に注意したいものです。
産後脱毛症
産後脱毛症とは、妊娠・出産を経た女性に起こる、ホルモンバランスの乱れによる、一時的な薄毛の症状です。出産から1年もたてば自然と回復するため、余計な心配をしてストレスをため込み過ぎないようにするのが大切でしょう。産後は小さなお子さんの世話に加え、自分の体調を管理もする必要があり、お母さんにとってつらい時期です。ホルモンバランスの乱れだけでなく、子育てにともなうストレスや睡眠不足も、体に負担をかけています。 そんな中でもしも産後脱毛症が見つかったとしても、自然と治る症状であることをきちんと理解しておきましょう。
一時的に育毛剤や育毛効果を期待できるシャンプーを使用してみるという手もあります。できる限り身の回りの人の助けを得ながら、心も体も健康な状態でいられるよう努めましょう。
牽引脱毛症
牽引脱毛症とは、髪の長い女性にとって身近な「ポニーテール」などの髪型を日常的に続けることで、分け目や生え際の髪の毛が薄くなってしまう症状です。髪に負担をかける髪型をなるべく避けることで、発生を防げます。毎日同じ髪型にすることで起こりやすい症状なので、強く髪の毛をしばるのをなるべく控えたり、定期的に分け目を変えたりすることで、発生を防げます。日頃のおしゃれが脱毛につながらないように、なるべく気をつけておきたい行動です。
円形脱毛症
円形脱毛症とは、500円玉くらいの大きさの脱毛が、頭部に1カ所以上発生する症状です。その脱毛は突発的に起こります。他にも、何度も脱毛を繰り返すものや、頭部以外の体毛が抜け落ちるものなど、多様な種類の円形脱毛症があります。男性のイメージが強いですが、これは女性にも起こる可能性のある症状です。円形脱毛症の原因としては、さまざまなものが考えられます。後ほど詳しくご紹介しますが、自分の体に起こった異変に気づいたら、まずすみやかに医療機関へ足を運び、専門の治療を受けることをおすすめします。
子どもにも脱毛症は起こる?
脱毛症は、子どもにも起こる可能性があります。お子さんの髪の毛に異変が見られたら、すみやかに医療機関を受診するとともに、考えられる原因を考えてみましょう。頭皮湿疹が原因の抜け毛
子どもの頭皮湿疹が原因で抜け毛が発生することがあります。アトピー性皮膚炎のお子さんや、花粉や動物などアレルギーをお持ちのお子さんは、アレルギーがもととなる皮膚のトラブルが原因となって頭皮の状態が悪化したために、結果として脱毛が起こることがあります。
髪の毛に隠れて見えない頭皮は、日々のお子さんの健康チェックでも見落としがちな部分です。頭皮をかゆがる様子が見られたら、頭皮の状態をチェックしてあげましょう。
しらくもが原因の抜け毛
白癬(しらくも)とは、髪の毛に白癬(はくせん)菌というカビの一種が感染して発症する、皮膚の病気です。大人でも子どもでもかかる可能性があります。しらくもになると、頭皮の腫れやかゆみが生じたり、白い斑点のようなものが出たり、大量のフケが出たり、化膿(かのう)したり、髪の毛がごっそりと抜け落ちたりします。犬や猫などのペットから感染する恐れもあるので、注意したい病気です。
円形脱毛症
子どもにも円形脱毛症は起こります。子どもが円形脱毛症になる原因は、ストレスとも言われることがありますが、それだけではないと考えられています。1歳の子どもでも円形脱毛症になることがありますが、摩擦で起こる一時的な円形脱毛症のケースもあります。もしもお子さんの頭皮に異常が見られたら、すみやかに医療機関で医師の診察を受けるとともに、原因を探りましょう。
円形脱毛症の種類
一口に円形脱毛症と言っても、その中には実にさまざまな種類があります。「もしかして円形脱毛症かも?!」と思ったら、念のため自分に当てはまるものがないかどうか確認してみましょう。単発性脱毛症
発生してからなるべく早くに治療を受けることが、その後の症状の改善にもつながります。小さな脱毛箇所には気づきにくいものもありますが、毎日のヘアケアでチェックを欠かさないようにしましょう。
多発性脱毛症
この場合、1つの脱毛箇所が改善したように思っても、次には別の箇所に脱毛が見られるようになります。何度も繰り返される脱毛の症状にお困りの方は、こちらの多発性円形脱毛症を疑ってみてください。
全頭性脱毛症
したがって、ある日突然に全頭性の円形脱毛症になるということは考えにくいということです。脱毛の兆候に気がついたら、なるべく早めに対処を行いましょう。
円形脱毛症の原因
女性や子どもにも起こりうる円形脱毛症には、一体どのような原因があるのでしょうか?自己免疫疾患
円形脱毛症の原因の1つとして考えられているのが、自己免疫疾患です。自己免疫疾患では、本来であれば自分の体を守るためにある自己免疫が、髪の毛を成長させる毛包を破壊し、それによって髪の毛の成長がストップしてしまいます。実は、自己免疫疾患は女性に起こりやすいと言われています。その理由としては、女性ホルモンの「エストロゲン」の影響が考えられていますが、はっきりとしたことはまだ解明されていません。女性は男性に比べて免疫システムが強い傾向にあり、それが自己免疫疾患につながっているという説もあります。
ストレスと脱毛症の関係
ストレスもまた、脱毛症の原因の1つとして考えられています。こちらもはっきりとしたメカニズムについてはいまだ解明されていませんが、依然としてストレスは脱毛を引き起こす要素の1つとして考えられているのです。妊娠や出産といった、自分の体に大きな変化が起こりやすい女性は、ストレスに晒(さら)されやすいとも言えます。また、月経周期や更年期といった、ホルモンバランスの変化も、ストレスにつながります。このようなストレスが原因で脱毛症を引き起こさないためにも、日頃からストレスとの上手な付き合い方をしておくことが大切でしょう。
その一方で、近年では子どものストレスも増加していると考えられます。まだ小さいころから、遊ぶ暇なく習い事や塾に通うようになる子どもが増えています。そのような生活を続けていく中で、ストレスをため込んでしまう子も少なくないでしょう。子どもがストレスをため込むことのないよう、普段の会話の中から注意深く見守ってあげましょう。
アトピーと円形脱毛症の関係
アトピー性皮膚炎は、円形脱毛症と関係があると考えられています。円形脱毛症を発症した患者さんのうち、およそ4割がアトピー性皮膚炎を持っているとも言われているのです。アトピーと円形脱毛症を合併している場合は、医療機関で相談してなるべく早めに対策をとりましょう。
アトピー性皮膚炎は、まだ根本的な治療法が見つかっておらず、解決が難しい症状です。医師による適切な治療を受け、体と心を休ませながら、じっくりと様子を見ていきましょう。
円形脱毛症の初期症状
円形脱毛症の初期症状として、よく見られるものがあります。あなたの、またはお子さんの髪の毛にも心当たりはないでしょうか?似たような症状が見られるのであれば、すみやかに医療機関を受診して医師の指示を仰ぎましょう。枕に抜け毛が増える
朝起きたら、枕に抜け毛がごっそりとついていることがないでしょうか? 数本の抜け毛であれば正常の範囲内ですが、これまでよりも明らかに抜け毛の量が増えたと感じたら、注意が必要です。脱毛斑が見られる
自分の頭皮に手で触れてみて、髪の毛が抜け落ちている箇所(脱毛斑)がないかどうかを確認してみましょう。早めに対策を施すことで、症状を改善できる可能性があります。頭皮について少しでもおかしいと感じたら、すみやかに行動しましょう。抜けた髪の毛根が細い
抜け落ちた髪の毛の毛根があまりにも細いと感じたら、それもまた円形脱毛症の初期症状と考えられます。髪の毛が細すぎるのは、髪が何らかの原因によって髪が正常に成長できていないということが考えられます。以前よりも髪の毛のボリュームや1本1本の太さが変化したと感じたら、対策について考え始める時期かもしれません。爪に凸凹が見られる
円形脱毛症の初期には、爪にブツブツと小さな凹凸が生じることがあります。爪と髪の毛は似通っているため、髪の毛の異常と同時に爪にも異常が生じることがあるようです。手の爪や足の爪に、見に覚えのない凹凸が生じていないかどうかチェックしてみましょう。円形脱毛症を発症した方の4分の1には、爪に初期症状が見られると言われています。円形脱毛症を治すには
円形脱毛症になってしまったら、病院のどの診療科に相談して、具体的にはどのような治療を受ければいいのでしょう?何科に行けばいいの?
円形脱毛症にお悩みの方は、皮膚科の医療機関を受診しましょう。「男性型脱毛症(AGA)」や、「びまん性脱毛症(FAGA)」の治療は保険外となりますが、円形脱毛症の場合は保険の対象となります。皮膚科での治療に際して自己負担で高額な費用を支払うことはないため、皮膚科の医師の診察を受けて、その後の判断を仰ぎましょう。
皮膚科で行われる治療法の種類
それでは、円形脱毛症で医療機関を受診した場合、どのような治療を受けることになるのでしょうか?皮膚科で実際に行われる治療法の種類についてご紹介します。●ステロイドの投与
ステロイド剤というのは、過剰にはたらいてしまった免疫機能を抑える治療薬のことです。円形脱毛症の原因が免疫機能にある場合、ステロイドを注射したりして治療を行うことがあります。注射の際に痛みが生じたり、注射によって陥没が見られたり、副作用が生じることもあるとされますが、高い治療効果があると言われています。入院をしてステロイド剤を点滴で一気に投与する「ステロイドパルス療法」というものもあります。●内服薬の服用
ステロイドの内服薬を服用する治療法です。外用薬や注射と同じように治療効果を期待できる反面、当然ながら副作用の心配もあります。ステロイドの内服薬は長期間服用を続けることで肥満や糖尿病になる恐れがある他、女性の場合は月経不順になるなどの副作用が起こる可能性があります。●外用薬の塗布
ステロイド・塩化カルプロニウム・ミノキシジルを始めとした外用薬を、患部に塗布します。主に、脱毛してしまった面積がまだ少ない、軽度の場合に適用される治療法です。内服薬と組み合わせて治療を進めることもあります。また、発症後の経過時間によっては、冷却療法や紫外線治療へと進めていくこともあります。●冷却治療
冷却治療では、ドライアイスや液体窒素といった冷たい物質を頭皮に当てます。そして、脱毛している部位のリンパ球のはたらきを抑えます。冷たいものを皮膚に当てるため、治療時には軽度の痛みが生じます。脱毛してしまった部分の面積がまだ少ない時期に行われる治療法の1つです。●紫外線治療
紫外線治療とは、「PUVA治療法」とも呼ばれ、頭皮に長波長の紫外線を照射する治療法です。冷却療法と同様に、脱毛している部位のリンパ球のはたらきを抑えるのを目的としています。髪の毛が生えてきた部位には紫外線の照射ができないとされています。こちらも、脱毛してしまった部位の面積がまだ少ない時期に限り実施される治療法です。おわりに
今回は、女性や子どもにも起こる可能性のある円形脱毛症についてお伝えしました。抜け毛や薄毛は成人男性だけでなく、女性や子どもにも起こりうる症状です。円形脱毛症だけでなく、びまん性脱毛症・産後脱毛症・牽引性脱毛症を始めとした症状は、多くの女性の悩みの種になっています。また子どもの頭皮の湿疹やしらくも(白癬(はくせん))も、脱毛につながる恐れがあります。
円形脱毛症の原因としては、女性に多いとされる自己免疫疾患やストレスなどが考えられます。また、アトピー性皮膚炎と円形脱毛症には関係があるとも言われており、併発している場合は医療機関を受診して専門家の意見を仰ぐ必要があります。
円形脱毛症の治療では、皮膚科の医療機関を受診する必要があります。治療には健康保険が使えるため、気になる症状があればすみやかに受診するのをおすすめします。医師の診断によって治療法が決定されますが、この治療法には内服薬や外用薬を始め、冷却治療や紫外線治療など、症状の程度によってさまざまな組み合わせが考えられます。
髪に関する問題は極めてデリケートな問題です。女性や子どもの円形脱毛症の悩みは1人で抱え込まずに、信頼できる医療機関へすみやかに相談しましょう。
女性や子どもに起こる脱毛症。中でも円形脱毛症は、医療機関による物理的な治療はもちろん心も休める必要があるかもしれません。その円形脱毛症には精神的なストレスも関係している可能性もあるため、周囲に円形脱毛症の人がいたら、話を聞くなどの精神的なケアや配慮を心掛けましょう。