未来では白髪や薄毛が治せる?カギを 握る「17型コラーゲン」とは

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年齢を重ねるとともに多くの人が悩む「白髪」や「薄毛」。白髪や薄毛は見た目印象として老化の一環と捉えられがちです。 できれば避けたいものですよね。
最新の研究で「白髪」や「薄毛」には「17型コラーゲン」がカギを握っていることが明らかになってきました。(2024年11月現在)
まだまだ研究段階である「17型コラーゲン」ですが、未来において、この「17型コラーゲン」を上手に活用することで白髪や薄毛の悩みが解消される可能性があります。 この記事では17型コラーゲンの役割や、髪の健康との関係について詳しく解説していきます。

17型コラーゲンとは

17型コラーゲンとは、髪がメラニン色素によって着色したり、健やかに生育するために重要な役割を果たしている物質だということが研究によりわかりました。
17型コラーゲンは体内の表皮の基底層の細胞と基底膜を結合するタンパク質の一種として知られてきました。 また、 17型コラーゲンはこの組織の細胞を結合するコラーゲンとして毛包幹細胞と色素幹細胞2つの幹細胞維持機構であることがわかりました。
さらに今回の研究で17型コラーゲンは毛包幹細胞(もうほうかんさいぼう)を発現させることもわかったのです。
まだ動物実験の段階ではありますが、17型コラーゲンは 髪の成長に必要な幹細胞の安定性を維持することで健康的な髪の成長につなげる機能を果たしていると言えるでしょう。

毛包幹細胞

毛包幹細胞とは髪の成長を担う重要な細胞で、毛包の中に存在しています。 毛包幹細胞は髪が成長する際に新しい毛髪を作り出す元となる細胞で、細胞分裂を繰り返しながら髪の成長サイクルを維持しています。

色素幹細胞

髪の色を決めるのはメラニンと呼ばれる色素です。 このメラニン色素は、毛包にある色素幹細胞によって供給されます。
つまり、色素幹細胞が正常に働いている限り髪は色素を持った状態で生えてきますが、この幹細胞が機能しなくなると髪は色が付かずにそのままの状態で成長し、見た目として白髪が増えてしまいます。

髪の生育における17型コラーゲンの働きを弱らせる「高脂肪食」

最新の研究では、高脂肪食が17型コラーゲンの働きを阻害する可能性が示されています。 高脂肪食による肥満ストレスは毛包幹細胞を標的とすることが確認できたそうです。(2024年11月現在)
動物実験によると連日の高脂肪食の給餌(この実験では4日間)により、活性酸素が生成され現在活動している毛包幹細胞を角質化に向かわせることが明らかになりました。
このメカニズムはまだ完全には解明されていないものの、脂質の過剰摂取は髪の健康に悪影響を及ぼすということは言えそうです。

現在「17型コラーゲン」を安全に補給するすべはない

研究により17コラーゲンの維持と機能が通常であれば、白髪や薄毛につながりにくいことが明らかになりました。 しかし、残念ながら現在の技術では直接的に17型コラーゲンを補充する手段は存在しません。(2024年11月現在)
市場には17型コラーゲンを含有するサプリメントなどが流通しているようですが、17型コラーゲンを経口的に摂取して効果のあるなしだけでなく、安全であるのかどうかさえわかっていないのです。
事実、17型コラーゲンの研究の第一人者である「東京大学医科学研究所教授・西村栄美氏」氏の所属する大学のホームページでも『当研究室の研究成果は、17型コラーゲンを頭皮に直接塗布したり、食品として摂取したりすることによって、薄毛・脱毛に対して改善の効果を与えることをうたったものではありません。』 (引用: 【17型コラーゲン】に関連するとされる化粧品・健康食品等への注意喚起について|東京大学医科学研究所老化再生生物学分野西村研究室)
というように、17型コラーゲンに関するサプリメントや塗布剤等に対して警鐘を鳴らしています。
科学者たちは、17型コラーゲンの生成を増加させたり、その働きを維持する方法の開発に取り組んでいますが、実用化にはまだ時間がかかると予想されています。
現時点では髪の白髪や薄毛防止には17型コラーゲンを維持し、減少を防ぐことが重要であり、栄養管理や生活習慣の改善を通じて、その働きを間接的にサポートする方法が主な対策になるでしょう。

髪が老化するメカニズム

さて、では髪の白髪や薄毛はどのように生じるのでしょうか?
一般的には白髪や薄毛は加齢現象の一つとして捉えられています。 しかし、実際に白髪や薄毛になる要因はさまざまです。
主な要因としては加齢、紫外線、酸化ストレス、栄養不足、生活習慣の乱れ、そして遺伝的要因が挙げられます。
以下で髪が白髪や薄毛になるメカニズムについて解説します。

白髪になる原因

髪が白髪になる主な原因はメラノサイトの機能低下です。 加齢とともに、メラノサイトがメラニン色素を生成する能力が衰え、髪に色を供給できなくなります。
また、遺伝的要因、ストレス、栄養不足、さらには病気によりメラノサイトの働きが衰えた場合に白髪になることもあります。
特に若い世代で見られる若白髪は、遺伝やストレスが大きな要因となることもあります。

髪が薄くなる理由

髪が薄くなる理由には加齢、ホルモンバランスの乱れ、遺伝的要因、ストレス、栄養不足などが関係しています。 特に、男性型脱毛症(AGA)や女性型脱毛症(FAGA)はホルモンバランスの変化が原因となり、髪の成長期が短縮されることによって毛が細く・少なくなり薄毛が進行します。

今、髪のためにできる確実なことは?

髪の老化と17型コラーゲンの因果関係については明らかにされましたが、今の所その17型コラーゲンを活用する方法はわかっていません。(2024年11月現在)
髪の老化を防ぐために“今できる”確実な対策としては「生活習慣の改善」と「栄養管理」の自分でもできることになります。
これらは17型コラーゲンの維持や、髪の健康全般をサポートする一助になるでしょう。詳しい対策を以下で紹介します。

バランスの良い食事を心がける

健康な髪のためにはビタミンやミネラル、タンパク質などの栄養が不可欠です。 特に、髪に良いとされる栄養素には以下のものがあります。
ビタミンA:皮膚や髪の成長を促進する働き
ビタミンB群:髪の成長を促進する働き
ビタミンE:髪の老化を遅らせ、髪の健康維持
亜鉛:新しい髪の材料となるケラチンの再合成を担う

高脂肪食を避ける

高脂肪食は血液の流れを悪くしたり、皮脂分泌物などにも悪影響を及ぼし髪の生育にも悪影響を与えます。 脂肪の過剰摂取は控え、野菜、果物、全粒穀物、そして良質なタンパク質を中心にした食生活を取り入れることを検討しましょう。
髪の健やかな成長はもちろん、自身の健康のためにも高脂肪食を避けるような意識が重要です。

ストレス管理

過度なストレスは、髪の成長を妨げるだけでなく白髪や脱毛のリスクを高める要因にもなります。
ストレスは交感神経を優位にします。 慢性的にストレスがかかれば、交感神経の働きにより毛細血管が収縮した状態が続き、頭髪へ向けた血流が悪化します。 血流が悪化すると髪への栄養供給はもちろん、老廃物の運搬も滞り、髪の成長にも悪影響を及ぼします。
自分なりのリフレッシュ方法を見つけたり、ウォーキングなどのリラクゼーション方法を取り入れ、ストレスをこまめに軽減することが髪の健康にとっても有用です。

紫外線対策

紫外線は髪や頭皮、髪の成長をつかさどる細胞にまでダメージを与え、髪の老化を加速させます。 帽子や日傘を使い髪や頭皮を守ることは、白髪や薄毛の進行を防ぐための基本的な予防策です。

質の良い睡眠を確保する

睡眠は髪の再生や成長に欠かせません。 成長ホルモンが分泌される質の良い睡眠を取ることが髪の健康につながります。
成長ホルモンは、入眠後2〜3時間後に最も分泌量が高くなります。 しっかりと熟睡することで成長ホルモンが分泌されるのです。
第一に、質の良い睡眠をとることが重要ですが、可能であれば1日7〜8時間の睡眠をとることを目指しましょう。 体力も回復すれば体の状態が健やかになり、各種ホルモンの分泌はもちろん、心身ともにリフレッシュにもつながります。
つまり、髪の健康のためには規則正しい生活を送ることも重要です。

適度な運動

運動は体全体の血行を促進し、頭皮への血流も促します。 運動習慣がついて血流アップができれば毛根に必要な栄養素がしっかりと届き、老廃物の運搬も速やかになるため髪の健康のサポートにつながるでしょう。ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲でできることから始めてみましょう。
これらの対策を実践することで、17型コラーゲンを守り髪の老化を予防することが期待できます。
特に未来の医療技術がさらに進歩するまで、日々の生活習慣の改善こそが最も確実で実行可能な対策と言えます。

まとめ

髪の老化や白髪、薄毛に対する未来の治療法につなげられる要素のひとつとして「17型コラーゲン」が注目されています。
しかしながら2024年11月現在、この17型コラーゲンを安全に補給する手段はまだ確立されていません。
そのため、今髪の健康を守るためにできることは、生活習慣を改善し、食生活を見直し栄養バランスを整えることです。
白髪と薄毛予防につなげられる17型コラーゲンの働きを少しでも長く維持するには、まずは高脂肪食を避ける意識が必要でしょう。
また、白髪や薄毛につながる要素を排除するセルフケアでできることはバランスの取れた食事、質の良い睡眠、ストレス管理、適度な運動をすることが基本的な予防策となります。
今後の研究の進展により、より効果的な治療法が開発されることを期待しつつ、日々のケアをしっかりと行うことが髪の健康を保つための方法といえそうです。


監修者:繁和泉
看護師、予防医学士として17年。その中で毛髪再生外来の診療に携わる。薄毛にともなう患者さんのお悩みに寄り添いながら、医学的なアプローチも含め「長い目で見た」毛髪のための日常生活やケアについての指導を個別性に合わせて提供。 同時に、情報化社会の中でWEBコンテンツで「正しい情報をわかりやすく」発信することに精を出す。