経皮毒とは?頭皮の吸収率は皮膚の約3.5倍?

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A.経皮毒は皮膚を通して体内に蓄積される毒だとされています。特に頭皮からの吸収率が高いという噂がありますが、確かな根拠はありません。
経皮毒はしばしば、私たちが日常的に使っているシャンプーや化粧品、洗剤や日用品などから皮膚を通して体内に吸収され、有毒な化学物質として体内に蓄積されると言われます。
その毒性はやがて、アレルギー症状や不妊症、癌や脳疾患などのさまざまな症状を引き起こす可能性があるとして、経皮毒の危険性が指摘されているのです。
しかし同時に、経皮毒の危険性を過剰に喧伝するのはオカルトだと一蹴する反対意見も多数存在します。
事実、「経皮毒」という言葉自体が俗称であって学術用語ではありません。
はたして何が正解なのでしょうか?
当コラムではあくまでも中立の立場を固持しつつ、経皮毒をめぐるそれぞれの論調をご紹介します。

経皮毒が危険だという論調

しばしば引き合いに出されるシャンプーを例にしてみましょう。
経皮毒が危険だという論調では、シャンプーに含まれる合成界面活性剤が危険要因だとされています。
もっと言えば、その中に含まれるとされるラウリル硫酸ナトリウムやプロピレングリコールなどの化学物質が危険のようです。
これらは皮膚組織を容易に突破して体内に吸収されるため、さまざまな症状を引き起こす危険性が強いと語られているのです。
また体内に吸収された化学物質は10日経っても1割程度しか排出されないため、体内に蓄積され続けていくようです。
頭皮は他の部分の皮膚と比べて3.5倍も吸収率が高いという噂が広まっていることもあり、どこでも買えるような市販のシャンプーは経皮毒の代表格のように扱われています。
ちなみに経皮毒から引き起こされる症状には薄毛も含まれるという論調が多いようです。

経皮毒は気にしなくていいという論調

一方、たとえ「経皮毒」なるものがあるとしても心配無用だというのが反対派の論調です。
そもそも先にも述べたように、「経皮毒」なる言葉は医学・科学用語ではなく俗称。
近い意味内容で「経皮吸収」という学術的にも使われる言葉がありますが、「経皮毒」はかつて界面活性剤の毒性を訴える場面において個人から端を発した造語なのです。
たとえ「経皮毒」であろうと「経皮吸収」であろうと、いずれにしても私たちの皮膚や体内に備わっている「ブロック機能」や「免疫システム」があれば心配無用だと反対派は論破します。
私たちの皮膚は表皮・真皮・皮下組織という何層ものレイヤー構造から成り立っているため、これらすべてを突破して体内に侵入したり浸透したりするのは現実的にほぼ不可能だということ。
しかも侵入しようとする物質のほとんどは表皮の一番外側にある角質層でブロックされるそうです。
だからよほどの細かい分子レベルでなければ皮膚を通過、ましてや血管まで行き届くことはないと考えられています。
しかしながらシャンプーの成分が体内に侵入する可能性が完全にゼロなわけではない、と反対派は続けます。
表皮から侵入できなくても、毛穴や粘膜を通して血液に至るという可能性を完全には否定できないようです。
なぜならこれらの部位には角質層がないため、他の部位と比べるとどうしてもブロック機能が弱まってしまうからです。
経皮毒は頭皮からの吸収率が(3.5倍も)高いという噂はこのような背景から広まったのかもしれません。
ただ万が一毒性の物質が血液に至ったとしても、血液には悪いものから身を守る免疫システムが働いているため、いずれにしても過度に心配する必要はないようです。
さらに別の観点では、たとえば経皮毒危険派が危険だとするラウリル硫酸ナトリウムという成分は現在市販されているシャンプーには含まれていません。
つまり事実と違うことを持ち出して経皮毒だと喧伝するのはいかがなものかというのが反対派の主張です。
そもそもの安全性が確保できていないシャンプーは市場に並ぶことができません。
薬機法違反になってしまいます。
よって市場に出回っているシャンプーを警戒し過ぎる必要はないようです。

おわりに

当コラムでは経皮毒をめぐるさまざまな論調をジャッジすることまではできません。
ただ冒頭の質問「(経皮毒の)頭皮の吸収率は皮膚の約3.5倍?」については、「確かな根拠はありません」と断言していいでしょう。
皆様の健やかな頭皮を保つためのシャンプー選びに少しでもお役に立てることを祈っております。