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A.髪質は遺伝します。とはいえ遺伝のしやすさや確率は千差万別です。
私たちヒトの人体は約30~60兆個の細胞によってできています。
そしてその細胞それぞれには46本ずつの染色体が入っています。染色体は塩基配列と呼ばれる4つの記号(A,T,G,C)から成り立っていて、その記号の並び方が遺伝情報となって私たちの人体を形成しているのです……。
という専門的な話、かつ目には見えないミクロすぎる世界の話を聞いて、耳をふさぎたくなるのは私だけではないでしょう。
そんな私のような人であっても「メンデルの法則」ぐらいは聞いたことがあるはずです。中学三年の理科の教科書にしっかりと載っていますから。
メンデルの法則とはつまり
簡単な話、メンデルの法則は「遺伝には法則性がある」ということを言っています。
1865年にグレゴール・ヨハン・メンデルによってなされたこの報告は、今なお遺伝学における重要な大古典といえます。
なお「遺伝子」という名称は、のちにウィリアム・ベイトソンによって名付けられたものです。
メンデルが遺伝研究の観察対象とした生物種のなかで、最も有名なのが植物のエンドウです。
彼は背の高いエンドウと背の低いエンドウを交配させるとどのような形質のエンドウが誕生するのかなど、さまざまなパターンでの研究を長きにわたって忍耐強くおこないました。
まさに執念に近いメンデルの研究によって、いわゆる「優性の法則」が発見されたのです。
さてここで突然ですが、みなさんに質問です。
クセ毛の母と直毛の父から生まれる子供の髪質は、クセ毛になるでしょうか?それとも直毛でしょうか?
また、どちらもあり得ると考える場合、その確率はどのくらいだと思いますか?
メンデルの発見した「優性の法則」に話をいったん戻すと、メンデルは次のような研究をおこないました。
それは、必ず背が高くなることが証明されたエンドウのめしべに、必ず背が低くなるエンドウの種子の花粉を受粉させるというものでした。
同様に、背が低いエンドウのめしべに、背が高いエンドウの花粉を受粉させるという真逆のパターンでも研究をおこないました。
そしてそれらのエンドウから収穫された種子を育てると、すべてのエンドウの背が高くなったのです。
この発見が意味するところは、遺伝には受け継がれやすいものとそうでないものがあるということです。
前者の受け継がれやすいものを「優性遺伝」、後者の受け継がれにくいものを「劣性遺伝」といいます。
エンドウでいえば、背の高い遺伝子のほうが受け継がれやすい優性遺伝だったのです。
とはいえ両親のもつ形質が対立した場合にどちらかだけが完全に受け継がれる「完全優性」は稀なようで、すべてのエンドウの背が高くなったメンデルの報告はレアケースではあるようです。
なお、強調させてもらいたいのは「優性遺伝」「劣性遺伝」というのは、あくまでも次世代に受け継がれやすい遺伝形質の確率を便宜上そう呼んでいるだけであり、どちらかが優れていてどちらかが劣っているということを意味しません。
子供へのクセ毛の遺伝
さて、優性遺伝や劣性遺伝があるとわかったところで、本題であるクセ毛の質問の答えです。
クセ毛の母と直毛の父から生まれる子供の髪質は、直毛よりもクセ毛になる確率が高いです。
それは簡単な話、クセ毛が優性、直毛が劣性の遺伝子をもっているからです。
一見、50:50の確率で受け継がれそうですが、そこには優性の法則がしっかりと機能しているため、子供にはクセ毛が遺伝しやすくなるのです。
ではどのくらいの確率かというと、一般的には70%程度といわれています。
では最後に、たとえば両親が直毛の場合はどうなるでしょう。
迷うことなく100%の確率で子供も直毛になりそうですが、ちがいます。
迷うことなく100%の確率で子供も直毛になりそうですが、ちがいます。
確率でいえば、一般的には98%程度という高確率で直毛になるそうですが、祖父母がクセ毛である場合、隔世遺伝というかたちをとってクセ毛が出現することも稀にあるようです。