AGAにも効果あり?抗がん剤治療による脱毛を改善するαリポ酸誘導体とは

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抗がん剤治療を受ける患者の多くは、脱毛の副作用に悩まされます。それを理由に治療を拒否される方も多いといわれていますが、技術の進歩の結果、抗がん剤治療による脱毛を改善する物質が発見されました。それがαリポ酸誘導体です。この物質を応用して、AGA治療に役立てるための研究も進んでいます。

そこで今回は、αリポ酸誘導体の効果や、αリポ酸誘導体がどのように抗がん剤治療に生かされるのかについてご紹介します。

αリポ酸とは

αリポ酸とは、体内で合成できるビタミン様物質で、チオクト酸ともいわれています。人間の体内のほか、牛や豚の臓器、また、ほうれん草、トマト、ブロッコリーなどにも、若干量ですが含まれています。

αリポ酸誘導体とは

αリポ酸誘導体とは、αリポ酸の安定性を向上させ、刺激性を抑えた物質です。

αリポ酸は酸や熱によって変異しやすい不安定な物質で、かつ刺激性があるとされています。そのような弱点を克服するために、亜鉛などその他の物質をαリポ酸に付加し、安定性を図って刺激性を抑えたものがαリポ酸誘導体です。αリポ酸の持つ力をより発揮しやすくした物質、と考えると分かりやすいかもしれません。

αリポ酸誘導体の主な効果

αリポ酸誘導体には強力な抗酸化作用があるとされ、その力はビタミンCやビタミンEの約400倍ともいわれています。
酸化物質が過剰に分泌されれば肌のターンオーバーを妨害し、老化を加速させます。その酸化を引き起こす代表的な物質が、「フリーラジカル」と呼ばれる不安定な構造を持つ分子。αリポ酸誘導体には、このフリーラジカルを中和する働きがあります。

加えて、αリポ酸誘導体には、シミ・シワの改善作用も期待されています。なめらかな肌をキープに役立つ他、酸化したビタミンCやビタミンE、グルタチオンを修復する力もあるとされています。

抗がん剤治療による脱毛に活用されるαリポ酸

αリポ酸誘導体は、抗がん剤治療の現場で脱毛を食い止める治療薬としても期待が集まっています。

抗がん剤治療の副作用

悩む女性と肩に置かれた手 抗がん剤治療で髪の毛が抜ける副作用は広く知られていますが、抜ける量や期間には個人差があり、治療の組み合わせによって症状の程度も異なります。

一般的に、抗がん剤による脱毛は治療開始後2~3週間後に起きます。治療が終わった1~2カ月後には症状が治まり、髪の毛も徐々に生えてきます。そしてその3~6カ月後にはほとんど回復し、開始前の状態に戻るという経過をたどります。

抗がん剤による脱毛は一時的なケースが多いのですが、心理的なダメージから抵抗を覚える方もいて、脱毛の副作用を理由に治療を拒否される方もいます。そのため副作用を気にせず、安心して治療を受けてもらうための取り組みやケアが求められています。

αリポ酸誘導体の活用で、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上も

脱毛という課題を抱える抗がん剤治療において、副作用の抑制に効果が期待されるのがαリポ酸誘導体です。 大分大学の医学者とアデランスの研究員によって研究チームが構成され、ラットを使った動物実験が実施されました。αリポ酸誘導体をラットのおなかに注射で投与したところ、脱毛が軽度になったとのことです。

この原理を活用すれば、抗がん剤の副作用に悩むがん患者の生活にも役立てられるかもしれません。今のところαリポ酸誘導体を使った脱毛抑制治療は研究段階ですが、エビデンスが確認されて本格的に導入されれば、がん患者のQOL向上に役立つでしょう。

αリポ酸誘導体の持つ力を、AGA治療に応用

αリポ酸誘導体に脱毛抑制効果があれば、AGA治療に活かせる可能性も出てきます。先に紹介した通り、専門家チームが行ったマウス実験でαリポ酸誘導体には脱毛抑制効果が確認され、そのデータを生かしてαリポ酸誘導体ローションも開発されました。これは薄毛部分に塗るだけで脱毛改善が期待できるといわれる育毛剤です。

しかしながら、AGAの主因物質であるジヒドロテストステロンに対し、αリポ酸誘導体がどのような働きを持つかはまだ解明されていません。同チームによる今後の研究成果が待たれます。

おわりに

がん患者にとって、抗がん剤による脱毛は深刻な悩みです。日常生活をサポートする意味でも、脱毛を抑制する治療薬の開発が望まれるでしょう。

αリポ酸誘導体はその可能性を秘めた物質で、AGA治療にも役立つかもしれません。
それが実現すれば、薄毛治療は大きく前進することでしょう。